電子書籍用に写真データを整理した。
印刷用にCMYK分解された画像では再現できない色域があり、よりオリジナルに近い色が出せるというのは、デジタルデバイスの強みでもある。ただ、印刷物と違って、どのような端末で見るかというところまでは全く管理できない。一般に事務用のモニターはかなり輝度が高くなっている。デザインのラフを画像で送ると、どうも相手がこちらで作った色とかなり違ったものを見ているらしいということがしばしばある。
これが電子書籍となるとタブレットや携帯で見るわけで、これらのディスプレイのキャリブレーション(色調、輝度などの設定)がどのようになっているのかはさらにわからない。ほぼ完全にデバイス任せだ。印刷物であれば、色が正確に再現されているかある程度の品質管理ができるが、デジタルデバイスはそのへんが実に曖昧で、いちいち見ている人の隣で、「これは色がかなり違っています」とか言うわけにもいかない。
さらに解像度ということでも現在のデジタル機器は少し前ものでは印刷物の半分の解像度ももっていない。今年の春に出たipadでも印刷物には及ばないのだが、不思議なことにデジタル機器で見ている分には、解像度の不足感がないのは、目が機器の表現の仕方に合わせた認識の仕方をしているからだろう。
ipadの解像度は一年で約二倍になったようだ。遠からず、印刷物の解像力を越えるかもしれない。


上はブラジルの瑪瑙、下は津軽の銀花石のディテール。どちらも手元のデータでは最大限の解像度だが、印刷物として耐えるほどの再現性はない。いずれタブレット機器などでも、より解像度の高いものが必要になるのだろう。

ips細胞のニュースで、一番驚いたのは、川崎重工が細胞培養事業をしているということだった。バイオメカ企業、とか呼ばれるようになるんだろうか。映画『プロメテウス』に出てくるアンドロイドには「ウェイランド社」の刻印が入っているが、将来内蔵にkawasakiのロゴが入ったりする時代が来るんだろうか。

写真はフィレンツェ近郊のアルノー川の石。

Agua Nueva Agate

メキシコ・チワワ州産のアグア・ヌエヴァ・アゲートはラグーナ・アゲート、コヤミト・アゲートに並んで質の高い瑪瑙だ。ラグーナ、コヤミトがほぼ取り尽くされてしまったのにたいして、定期的に採掘が行われていて、最近も良質なものが多く出回っている。埋蔵量が多いんだろうか。なぜか売られているものはスライスが多いのだが。色味は赤、オレンジ系がほとんどでバリエーションに乏しいが、模様に関してはモスやチューブなどのインクルージョンを含むとても複雑なものが多い。

写真は最近入手したもの。




アルノ・ヴェルデ

こんなときに石でもないが、先週から一時的に行方不明になっていたフランスからの荷物がようやく届いた。フィレンツェのアルノ川で採れる独特な大理石のスライスだ。同じ地方で採れる風景石、パエジナと基本的に似ているのだが、こちらは団塊状になっていて、「アルノの緑」と呼ばれるように、外側は緑がかっている。この石を知ったのはお馴染み、ロジェ・カイヨワの『石が書く』だった。小さな団塊の中に幾何学の公理が閉じ込められているようなパターンが独特で面白い。


福音館書店 月刊かがく絵本のあゆみ展

今月29日から2月8日まで、群馬県高崎シティーギャラリーで「おもしろかがく 絵本で体感──福音館書店 月刊かがく絵本のあゆみ展」が開催されます。福音館書店の月刊誌「かがくのとも」「ちいさなかがくのとも」「たくさんのふしぎ」からの原画展ですが、私が一昨年末に書いた「石の卵」からも出品することになりました。もちろん、絵ではなく、石そのものですが。本の冒頭に出てくる大きなセプタリアン・ノジュール、オレゴンのサンダーエッグ、レインボー・パイライトのセプタリアの三つが展示される予定です。お近くの方は是非ご覧になってください。
詳しくは以下に。

http://www3.ocn.ne.jp/~honnoie/

「石の卵」はおかげさまで大変好評でしたが、アマゾンなどで買えないのはなぜか、と、時々尋ねられます。雑誌だからなんですね。
書店から注文、または福音館書店から直接購入できます。

http://www.fukuinkan.co.jp/magadetails.php?goods_id=20900

青弘苑さん

津軽の銘石を扱ってらっしゃる青弘苑さんを埼玉は北葛飾郡杉戸町に訪れた。ミネラルフェアーではおなじみの業者さんだが、お店を拝見するのは初めてだ。
店舗といっても、いわゆるお店ではなく、ご自宅に倉庫プラスちょっとした展示があるということで、地図を見ると住宅地だ。すぐに見つかるかしらと思いつつ行くと、見つかるどころではなかった。看板も出ているし、なんといっても、巨大な庭石がドカンドカンと置いてある。アリゾナのレインボー珪化木の巨木が、背丈を超える巨大な梅花石(球顆が散っている流紋岩)が丸磨き(!)で、無造作に置いてあるのだ。育った国分寺には庭石をたくさん扱う造園業者があったので、庭石は見慣れていたが、石の質が違う。菊花石を組み上げた石灯籠まである。


店主の佐藤さんが石の業者になるまで、石をトラックに積んで高速道路も無い時代(昭和30年代)に青森から関東、愛知、さらに広島まで売り歩いた波瀾万丈の苦労話をたっぷりお聞きした。店舗の中にはミネラルフェアーには持ってこれない大きな石もたくさんあり、見応えがあったが、大きな孔雀菊花石がすばらしく綺麗だった。高さが50センチほどもある大きなものだ。私はあまり丸磨きした石を木彫りの台に乗せて観賞するという日本的なスタイルはあまりピンとこないのだが、これは文句なしの逸品だ!

ビジュアル本いくつか

模様石の本を作るにあたって、石関連の本をいろいろ見ているが、最近読んだビジュアル本をいくつか。

ひとつは『あたまにつまった石ころが』という絵本で、20世紀前半の話。マサチューセッツに育ち、子供のころから石好きだった男性が、持ち前の才覚で小さなガソリンスタンドから始めて自動車部品の事業で成功するも、大恐慌時代にほとんどの財産を失う大変な苦労をし、石への愛着と関心を生涯失わなかったことにより、科学博物館で異例の採用をうけ、やがて館長にまでなるという実話を、実の娘が愛情を込めてかいている。ペンと水彩による絵がジェームズ・サーバーの挿し絵のような、懐かしいタッチで、まるで寓話のような物語とあいまって、いい雰囲気だ。
おそらく「石好きなら当然知っているでしょ?」という感じで言われるほど有名な絵本らしいのだが、最近まで知らなかった。

あたまにつまった石ころが

あたまにつまった石ころが

もうひとつは『すべてのひとに石がひつよう』という絵本で、これは復刊ドットコムのリクエストで昨年復刊された。これもまた知らなかったが、タイトルを見て、買わざるをえないかなと。「あなた自身の石の発見」を通して、自分自身の中に深くおりていき、他者、世界を感じようという、1974年という発表された時代ならではという感じの絵本だ。絵にはネイティブ・アメリカンをモチーフにしたような人物が出てくる。全体に精神主義的・ヒッピーカルチャー的なのだが、これがもうちょっと時代が下って堕落すると、パワーストーンの話になる。
似た感性による石の本というと、日本在住のイギリス人スティーブン・ギルさんが『たくさんのふしぎ』から出した「石のたんじょうび」だろうか。私のような石の外観ばかりに関心が深い者とはちょっと違う指向だけれど、ユニークな絵本なのだ。

すべてのひとに石がひつよう

すべてのひとに石がひつよう

昨年新書で出た澁澤龍彦のコレクションの写真と関連するテクストを編集した『澁澤龍彦 ドラコニア・ワールド』に、いくつか石の写真が載っている。彼はコレクターではないので、特に面白いものはないのだが、やはり瑪瑙が好きだったようで、スライスの写真がある。この本には載っていなかったが、彼は水入り瑪瑙を持っていて、亡くなった後に奥様が見たら中の水が抜けていたという話を聞いたことがある。そのときは、どこか不思議なエピソードとして受け止めたが、売られている水入り瑪瑙というのはそんなものなのだ。私もこれまで大きな水入り瑪瑙を三つ四つ買ったが、全て水は無くなっている。瑪瑙は隙間だらけで、水入り瑪瑙として売られている鍾乳石状の瑪瑙のセクションは外皮こそ緻密だが、断面中央部は粗く、中の水はすぐに蒸発してしまう。瑪瑙は湿気の過多で模様もずいぶんと変わるもので、模様が薄くなったり濃くなったり、多きく変化する。海外から届いた瑪瑙の模様が変わることもあるが、日本の瑪瑙でも、久しぶりに取り出してみると全体にぼんやりしていた断面に、くっきりと縞が浮かび上がってくることもある。
本にはフィレンツェで風景石パエジナを買う下りがある。写真を見ると、楕円形に磨かれたパエジナは割れてしまったようだ。

澁澤龍彦 ドラコニア・ワールド <ヴィジュアル版> (集英社新書)

澁澤龍彦 ドラコニア・ワールド <ヴィジュアル版> (集英社新書)

パエジナは16-17世紀のヨーロッパで珍重された奇石で、石に風景、あるいは廃虚となった都市のような模様が現れているのは、果たして偶然なのか、石化作用をもたらす気体によって周辺の環境が映し出されたものなのか、はたまた天地創造の下書きなのか、等々、様々な議論があったが、はじめてこれらの石を論じたのはアタナシウス・キルヒャーだった。キルヒャーは都市の姿が浮かび上がっているパエジナの絵を残しているが、それはどうみても単なる町の絵で、石の模様ではない。「こんなふうにも見える」だ。当時これを見た人たちは、本当にこんな絵のような石があるのかと多いに興味を持ったに違いない。

テームズ&ハドソンからキルヒャーの大判のビジュアル本が出たので、購入した。工作舎の本はA5版と小さいので、大きなサイズで絵を見たかったのだが、1頁大、見開きになっているものがほとんど無く、地学関連の図は工作舎のものより小さいくらいだった。

Athanasius Kircher's Theatre of the World

Athanasius Kircher's Theatre of the World

キルヒャーの世界図鑑―よみがえる普遍の夢

キルヒャーの世界図鑑―よみがえる普遍の夢