秩父珍石館、西沢渓谷、亀甲石

lithos2008-10-20

週末に西沢渓谷に行く。春にも娘と行ったのだが、今度は嫁も一緒に、秩父を通って、車で行くことにした。
1998年に開通した全長6.5キロ以上にもおよぶ雁坂トンネルによって、埼玉の秩父から山梨へ抜ける道ができたわけだ。私が初めて西沢渓谷に行ったのはもう20年近く前で、中央本線から北にあがるどん詰まりのような場所だったが、今は大きな駐車場もできていて、ツアーバスもやってくる。
紅葉のシーズンには昔から人があふれるため、少し心配だったが、紅葉も2部か3部というところで、人出も延々行列というほどではなかった。西沢渓谷は崖沿いに細い道がついていて、昔は一方通行の表示が出ていたのだが、やはり山歩き人口は減っているんだろうか。10代、20代だけのグループというのは、ほとんど見かけなかった。

20年前に西沢渓谷に行ったとき、帰り道で猿が木を渡っているところを見たが、今回はなんと、麓の国道沿いのフェンスを大猿が悠々と歩いていた。村に何か物色に来るのだろうか。大猿のしばらく後を、一回り小さな猿が追っていた。もっといないかしら、と、周囲を見渡しつつ、娘が「あっ、あれは?」と、少し離れた坂道を歩いている、猿と同じような色の服を着た背中の丸まった年寄りを見て声を上げた。そんなにデカイ、二本足で歩く猿がいたら、「未確認生物=UMA」ハンターが、世界中から退去して押し寄せ、「西沢猿人」「ニシザワ・イエティ」とか、大騒ぎになるだろうが。ついでに「猿人饅頭」とかも売られるようになるに違いないな。

同じ道を引き返したが、国道140号の秩父にほど近いところで、「水石、盆栽」の看板が。石好きとは言っても、水石にはあまり興味がないのだが、寄ってみることにした。

実は先々週末も、「秩父珍石館」を見学に、娘と秩父に出かけたのだった。なんでも、巨大なセプタリア=亀甲石があるというので、ちょうどセプタリアに関する文章を書いていることもあり、一度見てみたかったのだ。
珍石館は羽山さんという、今は80代とみえる方が個人的にやっている石の博物館だが、人の顔に見える河原石ばかり1700個も陳列している、世界でも稀な石の博物館なのだ。この博物館の主役は貝の化石が目と口に見える、まん丸なノジュールで、館長の羽山氏はこのおかしな石に出会ってからというもの、「顔に見える石」に憑かれたようにして、収集してきたのだという。面白い石はいい値で買ってくれるというので、近所の子らが小遣い稼ぎに荒川の河原で拾った石をたくさん持って来たのだとも言っていた。
羽山氏はメインの「人面石」のレプリカを1000個も作ったというのだが、まぁ、全く売れなかったらしい。これがあるとき、SMAPの中井がやっているテレビ番組で「人面石くん」として、大きく紹介され、ゆるキャラとして番組で使用されたらしく、一気に訪れる人が激増したようだ。我々が行ったときも10代の男女グループが二組見学に来ていた。
街道沿いに立てられた看板にも「テレビで紹介!」の文字が踊り、レプリカもめでたく完売したらしい。

羽山氏がぴったり寄り添って一つ一つ細かく説明(時に同じ話を二度、三度)するので、見学者にはかなりの根性が必要だ。それにしても、このレプリカ(写真の右下にあるやつ)、目と口の配置がオリジナルと全然違うな。

秩父の瑪瑙があるというので、一瞬心躍ったのだったが、残念ながらこれはどう見てもブラジルのカット瑪瑙だった。

珍石館の入り口にある亀甲石は北海道のものだが、長さが50センチもあり、形も見事に亀の甲羅の形をしている。セプタリアは日本だけでなく、世界の様々な場所で、「亀の石」と呼ばれているが、これほど亀の甲羅に似ているものは初めてみた。

これにも驚いたが、隣のショーケースに秩父産の亀甲石があり、これもなかなかいい石だった。秩父の亀甲石は初めてみたのだが、もしかして、水石の店に同じようなものがあるのでは、という期待で、西沢渓谷の帰りに水石と盆栽の店に寄ってみることにしたのだった。

「山石園」さんは、石渡ご夫婦が敷地の広いご自宅で何十年もやってらっしゃる店だ。見事な菊花石などの水石がショーケースに並び、外にも無造作に多くの水石が置かれている。秩父の亀甲石がいくつかあったが、ひとつ、隔壁がはっきりと浮き出しているものがあり、購入した。かつては一度に何十も出てくることがあったらしい。ノジュールの泥岩部分が削れて、方解石の隔壁が鋭く表に出ているものを、「羽亀甲」と呼ぶとのこと。

石渡さん(ご本名としたら凄い)ご夫婦の人柄にも惹かれつつ水石と盆栽のお店を後にし、秩父の手打ちそばを食べて帰るという、なんとも渋い一日だった。