そうです、胃が痛いんです/「未来への遺産」

胃の内視鏡と内蔵のエコーの検査の結果、特段の問題は無し、ということで、ひと安心。今度は前の「顔を上げない」医者ではなかったが、「異常無し。ではこれで」と終わろうとするので、「あの、胃痛はどうしたらいいすか?」と聞くと、「え?胃が痛いんですか?」。そもそも「胃が痛い」ということで診察してもらってるんだけど....なんだかねぇ....。「では、薬を」ということになったが、なんとかここ二、三日は調子も良く、約二十日ぶりにビールが飲めた(と、このまま元通りにならないようにせねば)。
今週の『サンデー毎日』で拙著『巨石──イギリス・アイルランドの古代を歩く』に関してインタビュー記事を載せていただいた。また『文藝春秋』9月号で、恩田陸さんの「今月買った本」でとり上げていただいた。最強の遺跡関連サイトである「遺跡馬鹿」さんに本の紹介を載せていただいた(本当に素敵な紹介の仕方をしてくださって、感激した)。いずれもとてもありがたく、嬉しい。
「遺跡馬鹿」さん(と呼ぶのも変なのだが)は世界各地の遺跡を訪れているが、コロンビアのサン・アウグスティンを訪れているのがとても羨ましい。この遺跡は70年代前半にNHKで放映していた「未来への遺産」で知った。高地にぽつんぽつんとユニークな石像が点在している。牙の生えた、半人半獣のような人物が子どもを両手で逆さ吊りしている姿が多いのだが、石像がユーモラスかつ謎めいた姿で、当時非常に強い関心をもって観た記憶がある。ビデオなどない時代なので、後に他局で再放送した際も真剣に観た。番組に即した本も購入し、これはいつか必ず見に行かねばと思っていたのだが、未だ実現していない。放映当時はいつ頃の時代のものなのか、どのような文化の産物なのか、全くわからないとされていたが、現在は発掘調査も行われているようだ。
「未来への遺産」はその後の大ヒット企画「シルクロード」などとは少し違って、印象を重視した作りになっていた。単なる教養番組ではなく映像作品として質の高いものを作りたいという意識が強かった。そのスタイルが、中南米などの謎多き遺跡紹介にはぴったりで、私などは想像力をかき立てられること大だったのだが、この番組から大きな影響を受けた人は少なくないように思う。ホンジュラスマヤ文明のコパン遺跡発掘調査を行った中村誠一氏も、この番組を見ていなければマヤ学者にはならなかっただろうというような発言をしていた。今見返すと、あまりに印象重視というか、言葉少なく、ゆったりと「行間」の多い作りになっていて、遺跡ではなく、延々と木の梢に寄生している蘭を映していたりしているのが可笑しい。
ホンジュラスのコパンは数年前に一人で訪れたが、夜、レストランでご飯を食べていたら、プツっと電気が落ち、そのまま翌日まで停電してしまった。そのため、コパンの神殿の地下に入ることができなかったのが返す返すも心残りだった。神殿の地下には古い神殿が見事な色彩の装飾とともに残っている。しかも、この地下の神殿をリアルに復元した実物大レプリカを置いた博物館が、建築上の問題のため倒壊の危険ありということで、閉鎖になっていたのだ。これまた全くもって残念だった。青銅器も鉄器も車輪すら持たなかった人たちが作った実物は千年以上も残っているのに、重機を使って建てた現代の建築がたった数年で崩れるとは。