瑪瑙の売り込み

空気が春めいてきた。池袋の庭の梅も満開で、今日など実にきもちいい陽気だが.....雪も降っていないし、このままだと三月半ばに桜が咲いたりするんではなかろうか。この異様な暖冬はエル・ニーニョのせいなのか、所謂温暖化のせいなのか、はっきりしないようだが、世界的な規模で温暖化が進んでいることは確かだなようだ。しかも、気象学者たちが「悪い」シナリオとして予測していたよりも劇的なスピードで変化している可能性もあるという。温暖化が進んで北極海の氷が溶けると、海水の塩分濃度が大きく変わり、海流が大きく変化する可能性が高いらしい。潮の流れが変わると、気候も大きく変わり、さらに生態系にも予測不能の甚大な影響があるだろう。いったいどうなることか。

私のウェブ・サイトLithos Graphicsは半分は古代遺跡の、半分は瑪瑙などの模様石の紹介のサイトだが、ときどき、瑪瑙の方を見て、海外から売り込みがある。以前もイエメン人から「瑪瑙を買わないか」ともちかけられ、半年くらいやりとりをした。イエメンの瑪瑙は今はあまり市場に流通していないが、加工品としての歴史は古い。古代遺跡から瑪瑙のトンボ玉などが多数出土する。イエメンといえば、シヴァの女王伝説だな(ポール・モーリア的雰囲気で)、シヴァの女王が身につけたかも知れない産地の瑪瑙のひとつふたつくらい持っていてもいいかなと短絡的に興味を持った。が、いかんせん、馬鹿高い値段をふっかけてくる。アラブの商人......。そんなに払えるわけないでしょ、と、断ると、「最高の品質だから」と。サンプルをごく格安で提供するから金を送れ、と。大した金額でなかったので、騙されてもともとかなと応じて、金を送ろうとしたが、これが問題だった。二年ほど前、アルゼンチンの石屋とたびたび取引したが、彼のウルグアイの口座にちょっとした金を送るのに、とんでもない手間がかかった。海外への少額の送金は郵便為替がいちばん手っ取り早くて、手数料も安いのだが、これが使えなかったので、仕方なく銀行口座に送金する。が、三井住友銀行の外国債券の窓口で、どれだけ待たされたかわからない。「ウルグアイとかいうような政情不安な国は...」と言うのだが、最近ウルグアイが政情不安だという話は聞いたことがない。奥に引っ込んで、電話で「本部」の責任者とさんざんやりとりしたあげく、「やっぱ責任もてない」というので、それでもいいから送ってくれと頼むと、「じゃあ、責任を問いません」と、一筆書いてくれと。二回目以降も同じことなので、こちらから「責任は問わないし、一筆書くから、待たせないで」と頼むも、やはり「わかりました」と言ったきり、奥に引っ込んで出てこない。またしても本部とやりとりしていている。さんざん待たせたあげく、「何のためのお金ですか」と。「石を買う金です」。「石、ですか?」。このときの相手のきょとんとしたような表情を見て以降、私は「化石の標本です」と言うことにしている....。やはり三度目に「ともかく、事情は全て了解してるから、頼むから待たせないでほしい」というと、「わかりました」と言ったきり、奥に引っ込んでやはり電話をかけている......。結局、このときは本部の責任者が昼休みで不在だったため、この人がメシから戻るまで一時間近く待たされた。「本部に報告しないと私が怒られてしまうので」と。呆れた。そんなことがあった後、「イエメン」に送金と考えると、ビン・ラディンアルカイダ....テロ支援国....というようなやはり短絡的な単語が脳裏をよぎる。これはさらにハードルが高くなりそうだし、私の顔の問題もあるので(しばしばアラブ系かと指摘されるので)、とても窓口に行こうという気になれなかった。じゃあ、EMSの封筒に現金を入れて送ってくれというので、郵便局に行くと、イエメンにはEMSは送れませんとのこと。最終的に無くなっても仕方ないかと普通の封筒に入れて送った。なんとか無事とどき、先方から瑪瑙のサンプルも届いたが、約束よりも少なく、品質もいまひとつだった。「それは簡単なサンプルで、他にもっといいものがある」といい、値段も最終的に半分近くにまで下がったが、結局取引しなかった。
最近、コロンビアの山で親戚が瑪瑙を掘っているというドイツ人からコンタクトがあった。「あんたに優先的にわけてあげるから、金額を提示せよ」と。一般的な金額を提示したら逆ギレ気味に、「市場に全然出回っていない珍しい瑪瑙なのに、お前はそんな金額しか口にできないのか。もう一度チャンスを与えるから、まともな金額を提示せよ」と、言ってきた。自分から売り込んできて何を威張ってるのか、と、そのままにしている。興味はあるが、おそらく遠くない将来、ドイツのebayあたりでも見かけることになるだろう。中南米でコーヒー農園を経営しているドイツ人は多い。この「コロンビアの親戚」も、勝手に人の土地を掘ることはできないので、そうした関係者かもしれない。