石神井公園と三宝寺池

lithos2008-01-06

15年以上前に住んでいた石神井公園に散歩に出かける。約4年ほど住んだが、好きな場所で、できれば長く住みたかった。それまで住んでいたアパートを出て、同じエリアで物件を探したのだが、契約の一歩手前までいった賃貸マンションの大家が「自営のデザイナーなんて信用できない」とあれこれゴネ始め、結局、気に入らないからということで一方的に断ってきたのだった。すぐにでもアパートを出なくてはならなかったため、仕方なく隣の大泉学園に住むことにした。大家は分譲マンションの個人オーナーの女性とのことだったが、納税証明書を数年分添付したりなどの要求に応じ、連帯保証人まで付けたにもかかわらず、「フリーのデザイナーだけは信用できない」の一点張りだという話で、間に入った不動産屋も困惑していた。よほど「フリーのデザイナー」に個人的な恨みでもあったのだろう。もしかしたら同業者だったのかもしれない(?)
石神井公園には大きな人工の池である「ボート池」と、少し奥まった、湧水のある三宝寺池の二つのエリアに分かれている。三宝寺池の端にはかつて豊嶋氏の石神井城があり、今でも土塁などが残っている。1477年、太田道灌の軍勢によって落城、城主豊島泰経は家宝の鞍を付けた白馬とともに三宝寺池に沈み、二女照姫も財宝とともに後を追って入水したという伝説がある。これは後の作り話らしく、実際には照姫なる娘はいなかったようだ。三宝池は周囲が湿地になっており、木製の歩道が作られる前は鬱蒼としていて、もやの立ちこめる冬の早朝など、大げさにいえば幽玄というか、どこか怪しい雰囲気があった。入水した姫や財宝の伝説が似合う場所だったのだが、住んでしばらくした頃、三宝寺池特有の植生を保護するためということで、大幅な手が入り、周囲の草むらが大幅に刈り込まれ、柵や大きな木道ができて随分とこざっぱりした感じになって、ちょっと物足りなくなった。だが、それでもなかなかいい雰囲気の場所ではある。引っ越した後も機会あるごとに散歩している。昨年亡くなった飼い猫トントも、この池の端に段ボール箱に7匹まとめて捨てられていたうちの一匹だった。
三宝寺池にはいろいろな鳥がいる。冬には種々の鴨が越冬に来るが、カワセミゴイサギ、川鵜、バン、カイツブリなど、他であまり見られない鳥が多い。初夏にバンの子どもが親鳥の後を追って睡蓮の葉の上をちょこちょこと歩き回る様子、カイツブリの子が親鳥の背中に乗っている姿など、可愛らしい。川鵜は以前は2、3羽くらいほどしか見かけなかったが、今日は10羽近くもいるのを見て、驚いた。どうも近年都内の河川で川鵜が増え、川魚が激減しているところがあるらしい。川鵜は大きな鳥で食欲旺盛なのだ。鮎など、一日で40匹も呑むことがあるらしい。
石神井公園駅の周辺も、池の周辺も少しずつ変わっていくが、三宝寺池の畔にある茶屋は昔のまま、おそらく昭和40年代くらいからそのまんまにちがいない。なんでも大正時代から営業しているというから驚きだ。駄菓子も売っているし、酒も出す。ラーメン、おでんなどの軽食もあり、花見のシーズンには結構繁盛している。

写真は順番に、オナガガモ、川鵜、バン、豊島屋