石磨き

今日、仕事場の近くのスーパーに買い出しに行ったら、しゃがみこんでライスチョコの袋を指でギューギュー、ギューッと押してチョコを端からつぶしている男の子がいた。「ちょっと、そんなことしちゃダメじゃん」と言うと、キッとこちらを睨んで走り去った。なんともきつい眼だった。なぜかその後、気分が塞いでしかたなかった.....。



半年ぶりに瑪瑙を磨くことにする。磨くといっても機械が磨くので、それほど手はかからないのだが、それなりに大きな機械で、変圧器が必要だったりするので、場所をとる。しかも、水を使うので、どこでもできるというわけではない。
瑪瑙を集め始めて、原石や、切断したまま磨いていない石を買うようになったが、研磨に関する知識は全くなかった。瑪瑙は硬度が高いので簡単に磨けない。周辺に詳しい人もいなかったため、あれこれ試行錯誤したが、今、ある程度の大きさで、平面を磨くのには、フラットラップ・マシンを使っている。フラットラップマシンというのは、石の断面や板状に切った面を磨くためのものだが、私が使っているのは、振動を使って自動的に研磨する、ヴァイブレータリー・フラットラップマシンと呼ばれるタイプのものだ。水平に揺れる動きを出すモーターの上に大きなトレーを置き、そこに水と研磨剤を入れ、磨きたい面を下にして瑪瑙などを置く。研磨剤はシリコン・カーバイドのパウダーで銀鼠の細かい粉だ。粗い目のパウダーから細かい目のパウダーまで3段階くらい磨き、最後にバフがけといって、布地に仕上げ用の研磨剤をしみ込ませたものを入れたトレーで光沢を出す。都合4段階くらいの工程だが、機械を動かしっぱなしにして、長くて10日くらいかかる。要は切断面がどれくらいスムーズかということによるのだが、ギザギザしていると、いくらでも時間がかかることになる。厄介なのはシリコン・カーバイドで、有害なものではないが、重い物質なので、水道に流すと詰まる可能性がある。機械の周辺は濃鼠の飛沫が飛散して大変だし、乾くとこれが粒子が細かいので舞い上がって服や履物に着く。研磨剤同士が混ざると奇麗に磨けないので、粗い目の研磨が終わると徹底的に石などを洗って、研磨剤を落とさなければならない。ともかく何かと厄介なのだ。外国では安価な研磨の方法として、個人でも広く使われているが、ガレージなどでやるぶんにはいいが、日本の住宅事情には全くそぐわないともいえる。
私が買ったのは、Raytechという、石の切断や研磨などの機器を作っているアメリカのメーカーのラップマシーンだった。アリゾナの業者から買った。届いてすぐに使用してみたが、スイッチを入れてすぐに動かなくなってしまった。「何か間違った使い方したかな」と、こわごわ購入元に連絡すると、随分待たされた後、「それはモーターが不良だったんでしょう」とメーカーが言っているとのことで、モーターだけ新しいものを送ってきた。マシンからモーターだけ外して新しいものに取り替え、使用したが、それも1週間ほどで、「カタカタカタカタ....」といって止まったきり動かなくなった。再度購入先の男に連絡すると、「今、風邪で寝込んでいるので、1週間ほどは返事ができない。用がある人は一週間後に改めて連絡すべし」ということだった。自動返信のメールではなく、手動で送られたメールのようだったので、「返事ができないという返事ができるんだから、ちゃんと相談に乗ってほしい。こっちはあなたの店で買ってから2ヶ月ほど経つけど、未だたった一つの石も満足に磨けていないんだよ」と言うと、「メーカーに直接連絡しろ」とのことだった。これは話がこじれるのではと、大いに不安だったが、メーカーの担当者から連絡があり、メキシコで作っているモーターに不具合が多く、おそらく今度もモーターの不良だろうから、無償で新しいモーターを送ります、とのことだった」。しばらくしてモーターが送られて来た。二度目の交換をして、なんとか今でも動いている。決定的に面倒なことにならなくてよかったとつくづく思う。それにしても、Raytech社は代替用の重いモーターを自費で二度も日本に送って、おそらく赤字だったに違いない。