ロビン・ヒッチコック三昧

ロビン・ヒッチコックの新譜「shadow cat」を聴いた。和風にいうと「影猫」か? ジャケットには黒猫が意味ありげに登場するので、もしかすると何か不吉な意味合いがある言葉なのかもしれない。ちょっと検索してみたけれどわからなかった。彼が好きなシド・バレットの(ピンク・フロイドの)Lucifer Samっていう猫の歌を思い出す。
新譜かと思ったが、これは彼がレーベルを移動した約10年前くらいに録音された未発表音源集らしい。
ロビン・ヒッチコックは最近までちゃんと聴いたことがなかったが、すっかりはまってしまった(昨年来日してたのに、知るのが遅かった...)。コンピレーションやら未発表音源集やら沢山CDが出ているのでなんだかよくわからないのだが、どのアルバムをとっても面白みに溢れていて、聞き飽きない。しかも歳を重ねるごとに汲めども尽きぬ井戸のようにわき出しているヴァリエーションの豊富さ、スタイルの自在さよ。
彼に多大な影響を受けたというREMの新譜が一本調子で突っ走るような(タイトルが「アクセラレート」だからして)余裕の無さで、ちょっと聞き疲れてしまうのだが、ロビンさんの最近の作品はここかと思へばまたまたあちらなポップセンスが実に楽しい。
しかも、オリジナルの最近作である「オーレ! タランチュラ」の内ジャケにストーンヘンジの前で写る姿があるじゃないか!
ネット上で、「今どきストーンヘンジの写真なんて使うのはジュリアン・コープかロビン・ヒッチコックくらいだよね」と、対談している日本の評論家のレビューを読んだが、これは「巨石事情」(?)に詳しい者として言わせてもらうと、かなり違う。どちらもシド・バレット・フリークとも言えるのだろうが、ジュリアン・コープにとってイギリスの巨石は非常にシリアスな精神性追及の対象で、巨石案内の分厚い本を二冊も出し、モダン・アンティカリアン(今風の好古家)という巨石文化探求のポータルサイトを主宰して、巨石マニアを糾合するかのようなスタンスはまさにカルト的といっていいアプローチなのだ。巨石遺産を一種の精神的「財」として積み重ねているような重さ、大仰さがちょっと気になる。あまりポップでない。ロビンさんは、そんなふうに「財」を重ねることに興味なんてない。彼は色鉛筆でかいたおかしな風景の中を泳ぎまわっているだけなのだ。


オーレイ!タランチュラ