マルタ旅行-3

マルタには大規模な地下神殿がある。HAL-SAFLIENI HYPOGEUMは、マルタの遺跡の中でも最も謎めいていて、新石器時代の建造物としても傑出している。前世紀初頭、住宅の工事に伴って偶然発見された、複雑な三層構造の、地下10メートル近くまで達する神殿だ。中は小さな部屋が迷路のように連結されている。
長く密閉されていたため、驚くほど保存状態がいい。
THE HAL-SAFLIENI HYPOGEUMは建造物というより、岩盤を掘り抜いた石窟寺院で、形は地上の神殿建築を模したものになっている。柱や梁、屋根までが、石灰岩を切り出す形で擬似的に形作られているので、かつての地上の神殿の姿を知る上でも重要な遺跡なのだが、内部には7000体ともいわれるおびただしい人骨が積み重なっていた。埋葬地であるとともに、冥界と関連づけられた施設であったとみられている。
遺跡は保存のため、厳重に管理されていて、1時間に10人、1日70人と、見学者数を決めている。ほぼ1月先まで予約でいっぱいなので、シーズンに行く場合は、事前予約は必須だ。
遺跡内部は撮影できないので、ネットで公開されている写真を引用する。

人骨とともに服装品も多く見つかっているが、最も有名なのが、幅20センチほどの横たわる女性像で、石器時代のマルタ美術の傑作といっていいだろう。

ヴァレッタの博物館にこの遺跡の模型が展示されていた。

埋葬された人骨が部屋いっぱいになると、新しい部屋を増築するようにして、規模を大きくしていったようだが、部屋の出入り口の高さからみて、かつては厚く積み重なった人骨の上を歩いて部屋を移動していたと考えられている。遺跡はそれぞれにオーディオ・ガイドを渡して、説明を聞きながら歩くようになっているのだが、驚いたことに日本語の音声も用意されていた。「みなさん。この真っ暗な神殿の中を骨を踏みしめながら歩く音を想像してみてください....」と。

マルタ島には他にも発掘済みの遺跡がいくつかあるが、火曜日だけ公開されている二つを除くと(今回は曜日が合わず、見ることができなかった)、一般公開されていない。



遺跡を見た後は、町のあちこちを散歩する。レンタカーで移動したが、古い町の中は細い小路が交錯し、一方通行も多いため、下手をするとぐるぐる回っているうちに、方角もわからなくなってくる。
ヴァレッタに自動車で入っても停める場所もないため、隣町の駐車場からシャトルバスが出ているが、何故か我々が訪れた日は人も車も少なかった。店の多くが閉まっていてガランとしているので、不思議に思っていると、その日は少し離れた町でマリア昇天祭という、例年同じ日に開かれる祭りがあり、観光客も地元の人も、皆、そちらに出かけていたのだった。毎年同じ日に開かれる祭りで大きなパレードがあるというではないか。こんなことも知らずに行く旅行者は珍しいに違いない。
マルタの首都ヴァレッタマルタ騎士団によってつくられた要塞都市だ。町全体が世界遺産に指定されている。








古都イムディーナも要塞都市で、騎士団によってヴァレッタよりも早く造られた。静かで、大変趣のある町だった。