冬至のニューグレンジ

今年もアイルランドの遺跡ニューグレンジの「冬至の朝のイベント」が近づいている。今年も朝日がどのように石室に入るか、ウェブキャストをやると、アイルランドの遺跡に関するサイトを運営しているマイケル・フォクスから連絡があった。

http://www.newgrange.com/webcast_08.htm

彼が運営しているKnowth.comは、ニューグレンジや一般の人は立ち入りできないナウスの内部の貴重な写真が数多くあり、大変充実している。拙著『巨石─イギリス・アイルランドの古代を歩く』でもいろいろと相談にのってもらったが、残念ながら、紙幅の関係でほんの少ししか写真を紹介できなかった。興味のある方は是非サイトを訪れてみていただきたい。
http://www.knowth.com/index.htm

ここ10年ほど、石室の中でこの日のイベントを見たいと申し込む人の数が激増していて、選ばれるのはほとんど宝くじ的に難しいようだ。毎年夏に、地元の小学校の生徒が抽選を行っている。彼のようにずっと前から遺跡調査をしてきた人たちも特例ではないので、なかなか入れなくなっているようだが、ネットワークを広げて抽選で選ばれた仲間から写真を提供してもらったりしているようだ。
ニューグレンジの入り口にある、螺旋模様を彫りつけた石塊は石器時代の美術として非常に見事なのだが、内部の壁面に彫られた三葉の螺旋模様もシンプルで美しい。現在のアイルランドのシンボルになっている三つ葉のシャムロックとよく似ているが、アイルランドキリスト教をもたらしたセント・パトリックが三つ葉を使って三位一体を説いた時代とは4000年近くもの時の開きがある。なんとも不思議な符合だ。さらに、三葉の螺旋模様は大陸のケルトの螺旋模様にも似ている。ケルト的螺旋模様はアイルランドの独特な十字架ハイクロスの装飾などにも多くみられる。

イエーツは「アイルランドのいっさいの歴史の背後には、一枚の偉大な綴れ織りが垂れ下がっている」と言い、そこには「ドゥルイド教」もキリスト教も一緒に織り込まれていて、どこで「ケルト文化」が終わり、どこからキリスト教文化が始まったのか、判然としないとしている。
ニューグレンジの装飾とハイクロスの装飾との不思議な連続性をみると、この綴れ織りには5000年前の石器時代の文化も描かれているのだろうなと思う。

昨年も紹介したが、スコットランド北部のオークニー諸島にある同時代の遺跡メーズ・ホウの石室には、冬至の日の夕日が差し込むようになっている。こちらもカメラを設置して中継している。

http://www.maeshowe.co.uk/