ダーヴィッシュのジャケットとスライゴー

再び仕事で雪隠詰めの日々に...。
今年は昨年以上に「年末感」の無い年の瀬だ。もうちょっと待ってほしい。

先週のコンサート以来、ダーヴィッシュの最新作「Traveling Show」を聴いている。ボーカル曲が多く、好きなアルバムだ。
ジャケットもいい。このバンドのアルバムジャケットはどうも今ひとつなものが多かったが、このアルバムは近世の木版画のようなタッチで描かれたイラストで、70年代初頭のフォーク・ロックのLPデザインのような雰囲気があっていい。

ダーヴィッシュはアイルランド西岸のスライゴー出身のバンドだが、ジャケットに描かれているのもスライゴーの風景だ。これがなかなか面白い。



表ジャケット(とは言わないのかな?)にはスライゴーの町とバンドのメンバーが古風な楽士か芸人のような感じで描かれている。マンドーラ奏者は道化の帽子を被っているし、アコーディオン奏者はマスクをしている。裏面は街の郊外の風景で、頂上の平たいベンブルベンの山が描かれている。魔法の山だ。かつてこの山の山腹には異界へ通じる白い岩の出入り口があり、真夜中には馬に乗った妖精の群れなど、この世ならざるものが溢れ出ると考えられていた。
スライゴー州はフォークロアの豊富な地で、イエーツの『ケルトの薄明』の多くの部分はスライゴーの老人から聞いた話だという。イエーツの母親はスライゴー出身で、彼自身も幼少期にスライゴーで過ごしている。

CDの裏面に描かれている、突起のある山は、頂上に通廊付石室墓のあるノックナレイの山だ。墓は伝説の女王メーヴの墓だと言われていた。もちろん、石器時代の遺跡なのだが、付近ではメーヴの霊らしき「白い貴婦人」が現れるという話が「ケルトの薄明」にも書かれている。
麓には広大なカロウモアの遺跡群があるが、絵にもカロウモアのドルメンが一つ描かれている。カロウモアのドルメンはずんぐりした形のものが多いが、この絵は結構正確だ。

http://www.lithos-graphics.com/stonecircle/irelandcircle/carrowmore1.html


スライゴーはアイルランド最古の遺跡郡のある地で、紀元前7000年の中石器時代にまで遡る出土品があるという。カロウモアでは、ドルメンやマウンドをストーンサークルが取り巻いているが、これはその後ブリテン島に広く分布するストーンサークルの原型ではないかともみられている。
私が訪れたのは3年前の夏で、本に載せるために大急ぎで写真を撮り歩いていたため、町もゆっくり見ることなく通過した。是非もう一度訪れたい。

ダーヴィッシュという名前はイスラム神秘主義メヴレヴィー教団の旋回舞踊からとられたものらしい。万物は全て無限に循環するという思想のもと、細長いトルコ帽を被り、スカートのような衣装ひたすら旋回する。トルコのコンヤに教祖のメヴラーナの墓と本山があるが、以前訪れた際、舞踊のヴィデオテープを買って帰ったきたが、palだったので、見られずにそのままになっていた。
もしかしてと思い、YouTubeを調べたら、映像が複数あった。何でも簡単に見られる時代だ。


螺旋運動はニューグレンジの石彫やケルティックな意匠とも通底する、ということで付けたバンド名なのかもしれない。

ふと気づいたのだが、日ハムのダルビッシュって、この「ダーヴィッシュ」なんじゃないか? これで「侍ジャイアンツ」みたいな投げ方だったら、名実ともに「ダルヴィッシュ」なことになるのだが。