切断機

親族の病などで、しばしめげていたが、おまけに仕事場に空き巣にまで入られた。大事なカメラ2台とレンズを盗られた。バカな話だが、これで空き巣に入られるのは人生で3度目だ。2度目までは何も盗られなかった。当時、金目のものとは全く縁がなかったので、腹いせに一円玉を詰めた缶がぶちまけられていたのを憶えている。

キヤノンのデジカメはリースだったので、保証されそうだが、ペンタックスの67を盗られたのがなんとも腹立たしい。最近は専らデジカメで撮影していたので、ほとんど使っていなかったが、随分仕事で世話になったカメラだ。35ミリカメラをそのまま中判用に拡大したような、無骨な姿が好きだったのに。露出計が壊れていたので、売ってもジャンク扱いにしかならなかっただろう。金にならないものは返してほしい。


思い切ってアメリカから輸入した石の切断機が一月ほど前に届き、ここのところ、日中、ずっと瑪瑙を切っていた。
仕事場の、使われていない部屋に設置した。コピー機くらいの大きさだ。
これまで、コマックスが輸入している、おそらくアメリカのDiamond Pacific製と思われる10インチのカッターを使ってきた。これは基本的にトリム・ソーで、宝飾用にトリミングするのを主目的に設計されたものだった。それでも、万力がついていて、原石を挟んで押し切れるように作られているというので、購入したのだが、購入する際に、「万力はあまり役に立たないので、外しちゃいました」とのことだった。広告には「便利な万力付き」とあるのに、「役に立たない。外した」といい、しかも売値が変わらないというのだからおかしな話だったのだが、他に良さそうなものもなかったので、購入した。
刃は直径10インチなのだが、実際使えるのは半径の5インチから軸の部分を除いた、4インチ、つまり10センチほどだ。これで切れる原石はそんなに多くないし、やはり馬力不足で、硬い石を切っていると止まってしまうことも多かった。また、万力が無いため、手で押さえつつ切らなければならないので、何十分も力を入れて押さえていなければならず、ある程度以上の原石を切るには無理があった。

その点、今回購入したカッターは基本、大きな原石を板状に切り出すスラブ・ソーで、万力に固定してセットすると、後は自動的に切ってくれる。これは楽だ。
あえて難を言えば、機械が大きく、重く、さらにブレードの冷却用にオイルを使わなければならないので、石も手も油まみれになることだろうか。やはり、本来ガレージが無いと使えない機械だ。

ここ3週間ほど、10数年間に溜まりに溜まっていた原石をひたすら切った。一日10個近く切っているので、もう200個以上切っただろうか。
これは切ったら面白いに違いないと大いに期待していたのに、切ってみてガッカリ、というものもあったし、切り方を誤ったと後悔するものもあった。でも、瑪瑙を切るのは楽しい。

中でも比較的面白かった石を、少しずつ産地別にご紹介したい。

先ずは北海道、今金町、花石の瑪瑙だ。
花石の瑪瑙は硬い。乳白色の瑪瑙が特に硬い印象がある。古いカッターでは全く刃が進まないので、ほとんどの原石がそのままになっていた。

花石の瑪瑙で、私のウェブ・サイトLithos Graphicsにアップしてあるもののうち、赤味が鮮やかなものは、酸化鉄に浸けて焼きを入れた、色揚げをしたものだ。飾り石として磨かれた赤瑪瑙は、色揚げしたものが多い。
この産地の赤瑪瑙は本来オレンジ色をしている。
このオレンジ色の瑪瑙に、羽毛のような白いプルーム・アゲートが、花が咲いたように入っているものがあるが、「花石」という名はこの様子から付けられたものではないだろうか。花石の瑪瑙産地を開発したのは若狭の瑪瑙業者たちだが、おそらく日本海沿岸の瑪瑙にはこうしたものは無かったに違いない。