一かけ二かけ三かけて

私は小さい頃、かなりの怖がりで(今でも大して変わっていないが)、小学校低学年くらいまで、四つ年上の姉と同居していた10歳以上年上の従姉妹にしょっちゅう脅かされていた。
その頃とても怖かった歌に「一かけ二かけ三かけて....」という変わった数え歌があったことを、ふとしたことから久しぶりに思い出した。こんな感じだった。


一かけ二かけ三かけて
四かけ五かけ橋をかけ
橋の欄干手を腰に
はるか向こうを眺めれば
十七、八の姉さんが
花と線香を手に持って
これこれ姉さんどこ行くの
私は九州...... (この後記憶無し)
お墓参りに参ります........
...........
お墓の中から幽霊が
ふわりふわりと
じゃんけんぽん


決まって最後の「お墓の中から幽霊が」の下りで、姉と従姉妹が髪の毛を前に垂らして迫って来て、私が逃げるというパターンだった。
それにしても、そもそもあの歌は何だったのか、思い出せない部分はどんな歌詞なのかと気になって調べてみたら、これがなんとも面白い。
私の記憶から消えていた「私は九州...」の後が肝心で、なんと「鹿児島の西郷隆盛の娘です 切腹なされた父上の」と続くのだった。西郷の鎮魂歌だったのだ。
この歌は数え歌、手まり歌、お手玉歌、手遊び歌などとして、全国で歌われていたようだ。歌詞のバージョンがいろいろあり、西郷の命日が出てくるものがあるが、遊び歌なので、日付けは三月三日になっている。
こんなバージョンもある。


もしも私が男なら
士官学校卒業して
イギリス言葉を習わせて
梅に鶯ホオホケキョ
ホオホオホケキョと鳴いたなら
これでいっかん終わりです


まるで、無念をはらさん、というようなちょっと物騒な話がなんだかシュールな感じにぼかされていて、これは地元で歌われていたバージョンだろうか。そもそもどのように生まれて、分布したのか、とても興味深い。

嫁に歌ってみせると、義母の歌で聞いたことがあるという。小倉育ちの義母はお手玉をしながら歌っていたようだ。
以下のサイトに様々なバージョンが掲載されていて面白い。
http://www.mahoroba.ne.jp/~gonbe007/hog/shouka/ichikakenikakete.html