DNA、エドワード・カーティスの写真、ズニ族の謎

ツタンカーメンマラリアで亡くなったのか。マラリアのDNAが検出されたらしい。暗殺ではなかったわけだ。
DNAを調べるといろんなことが明確にわかってしまい、長年の仮説や物語も吹き飛んでしまうところがある。
DNAの検証でイースター島の島民の祖先はポリネシアから渡った人たちだとわかって、南米由来説を裏付けようとしたヘイエルダールの冒険も完全に過去のものとなった。
最近の日本人のルーツ論ももっぱらDNAで検証されているが、世界のいろいろな場所で同様のことが行われているに違いない。

20世紀初頭に北米インディアンの肖像写真を大量に撮ったエドワード・カーティスの写真集を見ると、不思議なくらいいろいろなタイプの顔つきがある。日本人にもいそうな顔もあれば、デルス・ウザーラみたいな(古い)顔の人もいる。彫りが深く、がっちりした顔つきもあれば、アマゾン流域の人たちのような丸みのあるのっぺりした顔もある。ヘアスタイルや衣装もバリエーションに富んでいる。大陸にたどり着いた人たちに、それぞれどのようなルーツがあるのか興味深い。







ニューメキシコ近辺に広がるプエブロ・インディアンのグループに属するズニ族は、言語も他の北米インディアンと全く共通性がなく、北米インディアンとしては例外的にB型の血液型が多く、文化的にもユニークで、以前からその特異性は論議の的だったらしい。

この特異性の根拠として、ズニ族には室町時代に集団で日本から大陸に渡った日本人の血が濃く入っている、という説を唱えている学者がいると知って、翻訳書を読んでみた。北米の研究者だ。
血液型だけでなく、日本人と一部の東アジア人に特有の腎臓疾患がズニにもみられるということ、日本語に似た発音の言葉がある、菊花文にそっくりな模様がある、など、いろいろと根拠をあげていくが、決定的な直接的証拠といえるものはない。
発掘された日本の槍の穂先というものが紹介されているが、(大航海時代以前は冶金技術はなかった)それが本当に日本のものかどうか、日本の専門家による検証は掲載されていなかった。
また、言葉に似ているものがある、ズニ族の儀礼的衣装とナマハゲが似ている、顔つきも似ているというところなどは、かなりおおざっぱな話で、当の日本人が読むとかなり無理がある。
でも、この本は多領域にわたる真剣な探究の軌跡で、こういう「蛮勇」ともいえる本は好きだ。日本であるかどうかは別として、コロンブス以前に太平洋を渡る文化的伝播があったかもしれないと思える「証拠」の中には興味深いものがたくさんある。著者のメインテーマとしては大ファールだったかもしれないが、重要なヒットがたくさん含まれている可能性はあると思う。とくに、内陸に住むズニ族の物語に、太平洋に関連した「記憶」がたくさん含まれているというのは、とても面白い。
著者は、DNAの検証によっていずれ自分の主張を裏付けるものが出てくるだろうと言っているが、おそらく既に検証が進んでいるのではないだろうか。

カーティスの写真の中のズニ族の人たちの顔には、あまり日本人に似ていると思えるものはなかったが、越中ふんどしのようなものをつけているズニ族の男性の姿がある(!)。

ナマハゲとズニ族の装束が似ているとは思えなかったが、カーティスの写真の中のカウィチャン族(元カナダ・バンクーバー近隣に住んでいる人たち)のダンサーがつけている目が飛び出している仮面はアフリカはコンゴのソンゲ族の仮面にとてもよく似ているし、中国古代揚子江文明の三星堆遺跡の仮面にもちょっと似ている。
(最初の二つの写真がカウィチャン族、次はソンゲ族、最後が三星堆で出土した仮面)








Native America (Icons Series)

Native America (Icons Series)

ズニ族の謎 (ちくま学芸文庫)

ズニ族の謎 (ちくま学芸文庫)