ドッガーランド

今、ナショナル・ジオグラフィック・チャンネルで「ドッガーランド 消えた大地の謎」という番組を放映している。
紀元前10000万〜8000年、中石器時代イングランド東部と現在のベルギー、オランダ、デンマークは繋がっていて、広大な土地が拡がっていたという話で、とても興味深い。
氷河期以降の温暖化で、海面上昇が上昇し、最終的には氷河が決壊することで、非常に短い時間に失われてしまった土地なのだという。
ノルウェーの企業が油田探査のために行った海底のスキャンデータを研究用に提供したことで、かつての陸地の様子を詳細に検証することが可能になった。また、実際に海底を探査することで、動物や人間の骨、また、漁労に使われていた仕掛けなどの遺物も大量に発見され、この土地が非常に肥沃で、漁労を中心とする豊かな社会が存在したことも明らかになっている。
土地を無くした人々がどこへ移動したのか、どのような社会的変容があったのか、など、研究課題は多いのだが、人類史的にみれば「比較的最近」までブリテンは島ではなかったということは、ブリテン諸島に広く分布した新石器時代の巨石文化のルーツを考える上でもとても面白い話だ。
アイルランドは当時も「島」だったようだが、最も古い巨石文化の名残があるとも言われている、西岸のカロウモアに中石器時代に住んでいた人たち、あるいはエイヴベリーやストーンヘンジにも近いチェダー地方の洞窟から発見された遺骨「チェダー人」なども、もしかすると、この「ドッガーランド」から来た人たちだったかもしれない。
イングランド東岸、あるいはフランスのブルターニュ沿岸部には、木の株を並べた「シー・ヘンジ」などのサークルが見つかっている。
シー・ヘンジは利用できるような石が少ないブリテン島東部の人たちによる、ストーンサークルの「木版」だという見方が一般的だが、もし、これと同じようなものがかつて「ドッガーランド」であった海底から発見されたら、ブリテン島の巨石文化の興りに関しても、新たな見方が必要になるのかもしれない。