モディリアーニの彫刻とファング族の仮面

モディリアーニの彫刻が48億円で落札されたらしい。モディリアーニは元は彫刻家だったけれど、肺を病んで断念したらしい。作品数が少ないこともあっての高値なのだろうが、それにしても48億円とは。

モディリアーニは同時代フランスで活動していた作家の多くと同様にアフリカ美術の影響を受けたことで知られている。作品を見るかぎり、特にファング族の仮面から受けた影響がとても大きい。影響という以上のものがある、と言っていい。細長い、流線型の顔、小さくアーモンド型の目、両こめかみから細長い鼻へと繋がるライン、あるかないかわからないような小さな口、全てファング族の仮面の特徴そのまんまだ。
ファング族は現在のガボンに住んでいる部族だが、仮面の造形の抽象性は独特で、アフリカ美術の一つの極みと言える。
モディリアーニと同時代のファングの仮面は、実際に祭事に使われたものしかないので、現存するものも少なく、なかなか市場に出ることはないが、現在流通している、7-80年代くらいまでに作られた仮面も、土産用の工芸品も含めてとても面白い。かたや名も無き達人作で、せいぜい高くて10-20万円、方や48億円なのだが、どうみてもファング族の名も無き彫り師作の造形の方が完成度も高く、比べて見ると、モディリアーニの48億円の彫刻は、なんだか出来の悪い弟子の習作のように見えてしまう。


上の二点はおそらく30年くらい前のものだと思うが、今、このクオリティーのものを作る人がいない。
一方、ファングの仮面は人気が高いので、エスニックな造形のひとつのステロタイプにもなっている。おかしなことに、「ファングの仮面」は、今、どこかファング族でない人たちによって大量に作られ、世界各地のエスニックショップなどで売られている。

ファングの仮面は細長いものは2メートル近いものもある。夢の島の熱帯植物園の入り口にも、大きなファングの仮面が飾られている。