真夏の探石はやはり辛い

山形の沢でアブに追われてから、夏の沢はちょっと無理だなと思っていたのだが、アブよけの薬があると知り、キャンプ用品店へ。ハッカ油が効くのだそうだ。じゃあ、試してみるか、ということで、山形に行った次の週末、南会津と只見にメノウ探しに家族で出かけた。南会津郡伊南村の小滝川は多々石という名前で、メノウが採れると複数の資料に書いてあったので、いずれ行ってみたいと思っていた。しかも名前が「多々石」...。これは期待できるではないか。
が、しかし、小滝川でも、二、三の支流でもジャスパーのかけらはあるものの、メノウらしきものは見つからず。小滝川の奥まで遡上すると、大規模な砂防ダムがある。新しそうなダムだ。ははぁ、これで石が落ちてこなくなったな、と、ダムの上の川原の地面に降りてみると、一見乾いている地面はドロドロの土砂の堆積であり、底なし沼のように沈みこむではないか。あやうく腰のあたりまで一気に沈むところだった。ダムが多くなるとメノウはともかく、ミネラルや養分を含んだ土や砂が下流に運ばれなくなり、河口付近の海が痩せるとよく聞く。
仕方なくもう少し遡上して沢に入るが、やはり大したものはなかった。
発見は、ハッカ油がアブに効くということだ。臭いが飛んでしまったり、汗で流れるとすかさず来るのだが、継続的に吹き付けていればかなり効き目がある。優れものだ。地元の店の主人に教えてあげたら、「これはじいさんの野良仕事に役立つ」と、大いに喜んでいた。
リベンジ(?)に只見の沢にメノウ拾いに行くが、ここは赤いジャスパーと球顆流紋岩の転石が多く、とても面白かった。流紋岩には小さな球顆が入っていて、空洞のものが多いが、中にはメノウの詰まったもの=サンダーエッグもある。オーストラリアのレインフォレスト・ジャスパーのようなものだ。穴に紫水晶の微小な結晶が入ったものもある。ジャスパーも色鮮やかで模様も面白いものがある。一日では見きれなかったので、是非また訪れたい。




娘の小学校最後の夏休みの締めに、日帰りで群馬県みなかみ町にメノウ探しに出かけた。
金の鉱山の廃墟のある沢で流紋岩の球顆の中にメノウの入った、所謂サンダーエッグがあるというので、鉱山の遺跡見学もかねて行ってみることにしたのだ。
細い沢沿いに鉱山跡まで舗装道路が残っていて、今でも林業の車が通っている。水がチョロチョロ程度の沢に降りて、どんな石があるのかなと、娘と見ていると、道の上で嫁が「うわっ、ヒルがいる!」と言うではないか。うわぁ、マジですか...、とは思ったが、とりあえず、鉱山まで行ってみることにする。
舗装道を登り切ると、比較的すぐの所に鉱山跡があった。当時の機械が放置されていた。

草が茂っていて、坑道の跡がわからないので、斜面を登りつつ探す。
しばらくすると、娘が絶望的な悲鳴を。見れば娘の水色の長靴をヒルが上ってくるではないか。慌てて刮げ落とし、我が長靴を見れば、なんと、やはり上ってくるやつが。あたりの地面を見るといるいる、ヒルが。それぞれ結構な速度で近寄ってくる。たまらない気持ち悪さに卒倒しそうになった。再び娘が泣き叫びつつ足をバタバタさせつつパニック状態に。これはイカン、早く道に戻ろうと大急ぎで斜面を降りると、下で待っていた嫁が既に血を吸われていた。我々は長靴だったが、嫁は素足にクロックスだったのだ。
娘はもう石なんかどうでもいいから帰る帰ると、泣き叫びつつ道を走り降りて行く。ちょっと、せめてもう少し沢を見てから....とも思ったが、私もこの手の生き物は大の苦手で、気持ち悪さに耐え難く、結局ほとんど石探しをすることなく、車まで戻った。

高野聖ではないが、上から落ちてきて、気づかないうちに服の中に入りこんでいるやつもいるに違いない....。最近丹沢で山ヒルが大量発生していてハイカーがシャツを脱いだら、背中にびっしりヒルが.....という身の毛もよだつ映像をニュースで見たことを思い出し、さらに映画「スタンド・バイ・ミー」なども思い出しつつ、お互い何を見ても慌てないようにしよう、と覚悟を決めて靴下、シャツ、ズボン、パンツと脱いでいったが、幸い三人とも服の中には入っていなかった。奇跡だ。
娘が「もうやだ。この町を早く出よう」(失礼な、町中ヒルだらけっていうわけじゃないから...)と言うので、谷川岳の麓の温泉に入って、あっさり帰路についた。結局、娘が沢に入ってまもなく見つけたこれが、この場所のメノウ入りサンダーエッグの唯一のちゃんとした見本になったが、縞の縁取りがあり、ほんのりブルーでなかなか悪くない。ヒルさけいなければ是非もう一度行くのだが....。

帰ってネットで検索してみたらば、今、日本中の山でヒルが大発生なのだそうだ。
ヒルには塩と木酢酸が効くらしい。靴下やズボンに塗り込んでおくと、なかなか寄りつかないのだそうだが、アブと違って、ヒルの様子は生理的に耐え難い。あの、探っているような動き....。仮に薬をつければ吸われないから大丈夫と保障されても、足元にいるだけでたまらなく気持ち悪い。
とんだ夏休み最後の探石になった。