『不思議で美しい石の図鑑』補遺5

ここ数年、欧米はちょっとした石の本刊行ラッシュだ。

ポーランドのシレジア地方西部、チェコ、ドイツとの国境も近いPloczki Gorneの瑪瑙だけを集めた大判の本がポーランドの出版社から刊行された。Ploczki Gorneの瑪瑙は比較的小さいながらも緻密な模様をもった美しい瑪瑙だ。縞模様に加え、鍾乳石状の構造、モスやセージナイトなどのインクルージョンのある、複雑な姿のものが多い。産出量が少なく、一般の市場にはほとんど出てくることはない。
拙著でも縞瑪瑙のイントロ頁に以下のものを収録したが、複雑な構造の瑪瑙なので、細部を拡大するとまた面白い。


今回刊行された本はB4判と大きく、200ページ、大半が1ページに1点から2点の瑪瑙を掲載した、贅沢な写真集的な作りだ。印刷も美しい。驚いたのは黒バックの写真ページがすべてマットPP加工されていることだ。こんな本は見たことがない。こんな仕様で日本で本を作ったら、とんでもない値段になってしまう。
以下のサイトで販売されている。本の値段が56 USDというのは安いのだが、送料が49 USDというのがちょっと厳しい。

http://www.spiriferminerals.com/product,3886,New-album---Agates-from-Ploczki-Gorne!.html



もうひとつはHans Gamma氏が出した、オレゴン州のOwyhee山地周辺で採れた風景画的なジャスパーを集めた写真集『Picture Jaspers』だ。
Gamma氏はスイス人で、ジャスパー好きが高じて米国に移住したという。ジャスパー専門のウェブサイトを開いていて、エリア別に詳しく紹介している。サイトのレイアウトも美しい。今回の本はこのサイトの雰囲気そのままに作られたような本だ。
自費出版のようで、彼のサイトから直接購入できる。本はB5判横で、76ページ、本が28ドルで、送料が17ドル。
http://www.worldofjaspers.com/

最後に、新しい本ではないが、最近知った石の写真集を。
Dirk J. Wiersmaというオランダ人の写真家の『Magic of Minerals and Rocks』は、石をテーマにマクロから極ミクロの世界まで扱ったユニークな写真集だ。
デス・バレーのZabriskie Point (音楽にピンク・フロイドを使ったミケランジェロ・アントニオーニの映画『砂丘』のロケ地)や玄武岩が柱状節理で六角柱状に割れているアイルランドジャイアンツ・コーズウェイ(レッド・ツェッペリンの『聖なる館』のレコジャケのロケ地)などのユニークな地形の写真から、奇岩、鉱物の結晶、瑪瑙やオパールの模様のクローズアップから、結晶構造の顕微鏡写真など、石が見せる極大から極小の造形を一冊に収めている。スケールは全く異なるのに、形の相似に気付くという仕掛けもあり、面白い。
彼の写真はストックフォトのScience Photo Library でも見ることができるが、この本にも収録されているパエジナとアルノー河の石灰岩は必見だ。


Magic of Minerals and Rocks

Magic of Minerals and Rocks