『不思議で美しい石の図鑑』補遺6

「風景石」の章で、フィリップ・ハインホッファーが作成したグスタフ・アドルフ2世が所有していたキャビネットの画像を載せたが、最近購入した本にいくつかキャビネットのディテールを写した写真が掲載されていた。パエジナ・ストーンを使った部分は無かったが、瑪瑙のメダリオンに絵を書き込んだもののクローズアップが掲載されている。


この本は16-17世紀に流行した「好奇心のキャビネット」のバリエーションをカラー図版満載で紹介したもので、B4判250ページにしてはとてもリーズナブルな値段なのだが、面白いのは、最後にシュールリアリストなどによる「好奇心のキャビネット」も紹介していることだ。アンドレ・ブルトンが彼がいうところの「呪術的芸術」に囲まれている写真も、現代版「好奇心のキャビネット」のようなものとして紹介されている。今、「正統な(?)」継承者はヤン・シュヴァンクマイエルだと思うのだが、残念ながら彼のオブジェは紹介されていなかった。
キャビネット博物学、解剖学、地学、などいろいろな分野が雑多で、「見る」ことへの異様なまでの関心の高まりが見てとれる。
形状・構造への関心の一例として紹介されている象牙のオブジェも面白い。一本の象牙から掘り抜いた超絶技巧の工芸品だ。プラトン立体のようなモデルを収納したキャビネットの絵もあり、ケプラーの惑星モデルを生んだ知的背景のようなものが感じられるし、最近翻訳が出たヘッケルの放散虫などのスケッチとも通じるものがある。放散虫の骨格は瑪瑙やオパールと同様、シリカでできている。


Cabinets of Curiosities

Cabinets of Curiosities

生物の驚異的な形

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