オーストラリア・ノーザンテリトリー旅行3

前日はカカドゥ国立公園内最大の町であるジャビルに宿泊した。
オーストラリアはびっくりするほど物価が高い。レストランに入ろうものなら、ごく普通の料理を一品頼んで30ドル以上。パブのビールが一杯6-7ドル。マクドナルドのセットも日本の1.5倍の値段だ。ガソリンがリッター1.55ドルくらい。
予想外の物価高に慌て、これはヤバいのではと、節約のためベーカリーで朝食・昼食を買う。これでも日本の外食代くらいはする。ジュースも一本4ドル。全て日本の1.5倍から2倍という感覚だ。テレビのコマーシャルを見る限り、安いのは牛肉くらいか。

早朝、ホテルのフロントに勧められ、ジャビルの湖に鳥を見に行く。大きな水鳥、マグパイ・グースがいる。

アカビタイムジオウムがたくさんいるので、おお、これは珍しいなと親子で写真を撮っていると、重機を運転する地元の男が「何撮ってんだ? おい、そんなの、そこらじゅうにたくさんいるぜ!」と。どうも害鳥扱いで、数を減らすために苦心しているらしい。


赤い羽根のハゴロモインコもいる。色鮮やかなアサヒスズメ、アオバネワライカセミなども。有名なオーストラリアのワライカセミとは別の鳥だが、この鳥の声も結構笑い声に聞こえる。

近くの川にはカカドゥの水鳥のシンボル的存在のセイタカコウがいた。顔が緑色のメタリックカラーで非常に大きな鳥だ。ジャズ的(?)な存在感のある鳥だった。別名ジャビルで、町の名はこの鳥の愛称からとったのかと思う。

その後、ウビルとならんで、カカドゥの岩絵サイトとして有名なノーランジー(Nourlangie)・エリアに行く。
先ずはナングルワー(Nanguluwur)に。ここはウビルやノーランジーのメインのサイトに比べるとマイナーな場所で、規模も小さいが、とても見ごたえのある岩絵が多く残っている。

特徴的なのは手だ。独特な線画で手を描いたものがあり、これは最古の岩絵に分類されているらしい。この絵を見て、ノーザンテリトリーの先住民に綾取り遊びの伝統があるということを思い出した。

岩に手を押し付け、口で染料を吹きつけて型をとる「ネガティブ・ハンド」も多い。シェルターの地上5メートルくらいはあろうかという高い天井に無数の手形が残されている。足場を組んで付けたのか、岩の上から蔓か何かにぶら下がって付けたのか。ここに手形を付けるのは容易でない。よく見ると中指と薬指を付けて人さし指と小指を離した、独特な形のものがある。
この手形は数万年前のものではないかと書いている資料があった。




数万年前とみられる旧いものもあれば、新しいものもある。これはノーザンテリトリーがかつてバッファローの狩り場だった頃の白人の船を描いたものだ。白人との接触を描いたものは「コンタクト・アート」と呼ばれる。帆船、汽車、パイプを加える農場主なども描かれている。先住民の一部は季節労働のようにして狩り場で働き、シーズンが終わると集落に帰っていったのだそうだ。船には錨の鎖まで克明に描いてあり、こんなんだったんだぜ、と、絵の得意な人が地元で報告している様子を彷彿とさせる。


足を開いている人物像が多い。おそらく人間ではなく精霊などかと思うが。


頭に飾りをつけた、手が四本ある像は火の女=アルガイゴ(Algaihgo)。天地創造の時代に登場する種族のうちの一人で、森にバンクシアの木を植え、火を運んだと言われている。アルガイゴは怖い女で、人を殺したり燃やしたりすると言われていた。



また、これらの細長い人物像はナーユァーヨングィー(Nayuhyunggi)と呼ばれる世界を創造した者たちの仲間で、ナーマンデーとも呼ばれる。様々に姿を変え、洞窟や木の虚に棲み、夜になると出てくる。人肉を食べるので怖い、とある。どうもオーストラリアの精霊や造物主たちは恐ろしげなものが多い。しかも、それらは過去の存在ではなく、同時代に存在し、気をつけないと遭遇する、怒りをかう、災難に遭うと考えられていたようだ。