ペルー・ボリビア旅行13日目

朝9時に「ミスター・エンジェル」が迎えにきた。今日は昨日行ききれなかったチムー王国の「ドラゴンの神殿、別名虹の神殿」に先ず行く。小規模な遺跡だが、壁面のレリーフは比較的良く残っているところがあり、ドラゴンのような動物が描かれている。また、虹の両端に動物の頭がついているような形があり、このために「虹の神殿」と呼ぶのだろう。昨年訪れたコロンビアのサン・アグスティンにも虹の両端に動物の頭がついているものがあったことを思い出した。時代はコロンビアの方が少し早いくらいだろうか。



チムーの遺跡はなんというか、本当にスクウェアで、外界から遮断されたような構造になっている。この王国がここまで強大になる前、どんなことがあったのだろう。


もうひとつはモチェ時代の遺跡でエル・ブルホの複合遺跡と呼ばれているものだ。これは少し離れていて、トルヒーヨ市内から北に約60キロ行った、海岸沿いにある。大きな神殿が複数あり、まだ発掘途中だが、2006年に女王とおぼしき女性の墓が見つかり、大いに話題になった。それに合わせて博物館も新設されている。女王のミイラが展示されているが、寝た状態で(屈んだポーズで埋葬されているものも多いのだが)、肌に刺青の跡がしっかりと残っていた。金の装飾品、貴石の装飾品もみつかっている。非常に面白かったが、撮影は禁止。

見学できる遺跡のメインはこの女王の墓が出たカオ旧神殿の彩色壁画と、遺跡全体を覆っていたと思われる戦士像、捕らえられた人たち(生け贄に供される人たちだと思うが)などの彩色壁画だ。こちらは「月の神殿」にくらべるとあまり保存状態は良くない。




施設はあちこちの通路に立ち入り禁止のテープが貼られていて、どうも上手くない時期に来てしまったようだ。案内板なども剥がしてあったので、おそらくリニューアルの途中なのだろう。遠くに見える建物には壁面に大きなヘビのような動物が彫られているようで、これは面白そうだ。

一番大きなエル・ブルホのメイン神殿が遠くに見える。
駐車場にいた「観光警察」に「あそこには行けないの?」と聞くと、歩いていくならOKと言われた。歩き始めると途中の地面に掘り起こしたような穴が無数に開いている。盗掘の跡だ。墓を彫って副葬品やミイラを巻いていた織物を取り、闇で売る人たちを「ワッケーロ」と呼び、昔は公然と行われていたようだが、今は厳しく取り締まっているに違いない。こうした盗掘が盛んで、公的な管理がずっと行き届いていなかったために、国立博物館よりも私立の博物館の方が充実していたりするわけだ。
戻ってきたら別の警官が「ダメじゃないか、あそこに行っては」という。どっちなの?


ラルコ博物館など、大きな石碑やチャビンの遺跡から引き抜いてきたとおぼしき人面石像などが複数展示されていたから、昔はそうしたものも金を出せば買えたのだろう。
地面には土器の破片がたくさん散らばっている。沿岸にその後だれか住んでいたいとも思えないので、おそらく古い土器片だろう。何か模様があるものでもないかしらとしばし目をこらすが、やはりそうはいかない。
人骨の破片らしきものもあった。それにしても、この穴の多さはなんだろう。やみくもに掘った結果なのか、これほどの密度で墓があったのだろうか。質問したくてもここには英語を話す人が誰もいなかった。

トルヒーヨは市街を一歩出ると広大なサトウキビ畑が広がっている。他の作物は見当たらなかった。

これであっさりトルヒーヨの遺跡巡りは終わり。まだ二、三時間余っているが行くところも特に無いので、再び昨日と同じワンチャコ・ビーチに。
アンヘルと別れ、今日は普通の魚のフライを食べる淡泊な白身魚だったが、切り身だったので、どういう魚なのかわからず。
浜に出て貝殻を探す。
ネットに貝殻などを拾ったという観光客の書き込みがあるのだが、全く無かった。これほど何も無いのも珍しい。
浜には貝はなかったが、小石がたくさん揚がっている。ふと見ると縞めのうの小さな破片があるではないか。無色だが、くっきり縞が入っている。俄然目を凝らして真剣に石探しをするが、結局めのうはこれひとつしかみつからなかった。

漁師が浜に採った魚を揚げ、そのまま砂浜の上で売っていた。リサという名のアジくらいの大きさの魚だ。

写真を撮っていると、「どこから来たのか?」と、英語で話しかけてくる初老の男性。少し話をし、離れるが、どうも彼も石を拾っている。
「石を拾っているの? どんな石を?」と問うと、ちょっと恥ずかしそうに「ちょっと好きなんでね」ということだった。見せてくれた石は灰色系のすごく渋い石ばかりだった。
「さっきめのうを拾ったんだけど」と見せると、「なんだ、お前も石拾いなのか」と、苦笑い。めのうはあまり見たことが無いという。

延々と浜を歩いた。長い海岸だ。
「ここは一年中ずっと春なんだ。他の季節はないんだよ」と例の男性が言っていた。日中の気温は日本の5月下旬の暑い日くらいだろうか。雨はほとんど降らないというが、すっきり青空にもならない。どこかおぼろな感じ。高地の方が雨期でも日差しはきついし、乾燥していた。

再び天使に空港に送ってもらって、リマへ。これで今日はお終い。今旅行中で最もあっさりした一日だった。