オーストラリア・キンバリー旅行3日目

早朝にブルームを出発して東へ、キンバリー地方北部を横断する660kmのラフ・ロードであるGibb River Roadの入り口の町、Derbyに向かう。
今回はBroomeとWestern Australia地方最東端の町Kununurraの間を、前半は北側のGibb River Road、帰りは南側の舗装道・国道1号線=Great Northern Highwayを通って往復するというコースだ。当初はKununurraからダーウィンまで行き、車をダーウィンで乗り捨てようかと思っていたが、移動距離が長くなるのでBroomeに戻ることにした。

Derbyまで200キロほどだが、100キロほど走ったところで燃料関係の異常を示す警告サインが2つも点灯した。マニュアルを見ると、「すぐにトヨタのお店に持っていくべし」と。こんな所で「トヨタのお店」って、あんた。
Derbyでレンタカー屋に電話すると、例の坊主頭くんが「ライトをつけてみて」「ウインカーはちゃんとついてる?」とか言う。警告灯の一つは燃料系、もうひとつもキャプレターのような形のサインなので、ライトは関係ないと思うんだが。
ライトは問題無し、というと、「それは燃料フィルターの目詰まりかもね」という。どうすれば?と聞くと、Derbyに修理が出来る店があるからそこに行くべしと。出発早々もう修理とは!  大丈夫なのか、この車は? でも考えようによってはキンバリーに入る前に問題が発覚してよかったかもしれない。もし枝道でエンストでもしたら、衛星電話で緊急連絡し、ビーコンをつけて助けがくるのを1日待たねばならなかったかもしれない。旅行のスケジュールがその瞬間に崩壊する。不幸中の幸いと考えよう。

Derby周辺にはバオバブの木がたくさん生えているが、プリズン・バオバブ・トゥリーという幹がひときわ太く、幹の中が中空になっているバオバブがある。19世紀半ば、奴隷として使役するために周辺で捕らえてきたアボリジニたちを一時的に閉じこめていた木だ。かれらの多くは真珠採りのダイバーとして働かされたのだという。数人を鎖で繋いで木の洞の中に立ったままにさせていたのだ。入植初期の記録を読むと胸の悪くなるような話が多い。アボリジニを追い出すために小麦粉に毒を混ぜたものをあちこちに置いておく、襲撃して射殺する、若い女だけ残して男装させ、昼間は牧童として働かせ、夜は男の相手をさせる。まるでカンガルーでも狩るようにアボリジニを「ハンティング」して楽しかった、と、自分の母親に手紙を書いている者もいる。

車の修理に1時間半ほどかかって、ようやくGibb River Roadに入る。最初からオフロードかと思いきや、かなり長い距離、幅は狭いが舗装されていた。

3時ころ、最初のキャンプ地のウィンジャナ=Windjana渓谷に着く。テントのバッグを開け、さて、どう組み立てるのかな、と、説明書をとり出すと、一度水びたしになったのだろう、全頁張り付いていて、1行も読めず。似たようなテントは持っているのだが、フライの建て方がどうも一部よくわからない。
あれこれ試行錯誤しているうちに日が暮れてきた。そもそも、このレンタカー屋、かなり問題あるぞ。この後大丈夫なのか、この車は。

できればこの日に渓谷を散策したかったけれど、仕方ない。この日はいろいろあって非常に消耗しきって寝た。