オーストラリア・キンバリー旅行5日目

Silent Groveキャンプ場を出て、近くのBell Gorgeに。段々になっている滝の下が大きなプール状になっている、美しく、泳ぎやすい場所なので人気がある。早速水に入るが、これが冷たい。とても長く入っていられない。


5mほどの高さの岩壁から飛び込む親父と尻込みする小学校低ー中学年くらいの息子がいた。「ほら、お前も勇気を出して飛び込まんか」という感じで促す親父。だが、どうみても初体験ぽい息子に5mは怖すぎる。
結局息子は逡巡したあと1mほどの所から飛び込んで、「やった! 飛び込めた!」と大いに満足したようだった。恐いもの知らずの我が娘は5mの方に挑戦。
「ほら、女の子が飛び込むぞ、見てなさい」という親父。

この後、やはり美しいことで知られるManning GorgeかGalvins Gorgeのどちらかに寄るつもりだったが、時間がなく、そのままこの日の宿泊地であるMt. Elizabeth Stationに。オーストラリアでは牧場のことをStationと呼ぶ。昨日・今日は比較的余裕のあるスケジュールだったはずなのだが、思いの外時間がかかっていて、先が思いやられる。
Mt. Elizabeth Stationは第二次大戦後に開かれ、60年代に現在の経営者であるLacey夫妻に譲り渡された。妻のPatが迎えてくれた。70歳くらいだろうか。大きな人だ。お尻の大きさもすごい。
敷地内にあるWunnumurra Gorgeになかなか見事な壁画があることを知っていたので、行き方を尋ねる。このとき2時くらいだったが、道が険しいので本当は1時発までしか認めていないのよ、暗くなる前に必ず帰るようにね、と念を押される。
Wunnumurra Gorgeまでの道はかなり厳しいと事前知識として得ていたが、確かにすごかった。道というより、岩がゴロゴロする斜面を少しずつずり落ちていくような場所があり、なかなかスリリングだった。これは本格的な4WDでないと絶対に難しい。Britzの坊主頭くんは「4WDのローギアは使わないだろうから」と、説明しなかったが、これが必需だった。Britz!

Wunnumurra Gorgeに着くと、滝のある場所に家族を残して岩絵の場所に向かう。川に面した壁面に描かれているので、すぐに見つかった。
なかなか見事なWandjina=ワンジーナ像だ。ワンジーナはこの地方特有の精霊像=祖霊像で、雲や雨を生み出す力をもっている。アボリジニのドリームタイムに出てくる精霊などは決して人間に対して優しいものではないのだが、ワンジーナは人に害を為すようなことはないという。が、かつて人間と闘ったという伝説もある。現在もワンジーナ像はこの地域の文化のシンボルで、絵にも多く描かれる。
頭が丸く、大きな黒い目、口が無く、がっしりした体躯はどこかスーツのようにみえるものをまとっていて、これをして、古代に来訪した宇宙人の姿を記憶に止めるものだと主張したのがデニケンを始めとする「古代宇宙飛行士論者」だ。が、ワンジーナは古いものでも紀元前2000年頃までと、オーストラリアの壁画としては決して古い部類ではない。




この日はMt. Elizabeth Stationで、キャンプではなくキャビンに泊まることにした。テントを張っている時間が無く、翌日早く出ることになるからだ。スチール作りの簡素なキャビンだが、宿泊費は高い。食事代を入れるとちょっとした高級なホテルに近いものがある。このためこのステーションは評価が大きく分かれ、Trip Advisorでも「最悪」という書き込みがいくつかある。
たしかに値段は取りすぎの感があるが、夕飯はなかなか美味しかった。女主人のPat、シェフの女性(おそらく親族)も、どこかぶっきらぼうなところがあり、感じ方によっては客にたいしてぞんざいな感じでもあるが、食事が終わったあと、皆の前でPatが話した牧場の歴史を聞くと、いかに過酷な環境を生き抜いてきたかよくわかる。現在、Gibb River Roadはオーストラリア有数の難所のように言われているが、かつては道そのものがなかったのだ。今でも雨期になると道が水没してしまうので、数ヵ月閉じこめられる生活だという。そういう環境を生き抜いてきた人たちであり、これが観光地の宿泊施設のようでないのは仕方ないだろう。Patはややぶっきらぼうな中にも人柄の良さがにじみ出ていて、いわゆる接客業の愛想はないが、ここでの宿泊は体験としてなかなかよかった。
牧場は牛が約 6000頭。そろそろ借地権が切れるようで、部分的に返還する必要があるというような話をしていた。