オーストラリア岩絵撮影行・11日目(カカドゥ国立公園)

実質的な最終日だが、ダーウィンからケアンズに戻る飛行機は夜なので、かなり時間がある。やはり最後まで岩絵撮影に時間を使うことにし、ノーランジーとともにカカドゥ国立公園内の岩絵サイトとして知られる、ウービルに行く。途中までは昨日訪れたオーエンペリと同じ道を行く。ウービルはカカドゥ国立公園の北東の端だ。
前回は夕暮れ時に行ったので、別の時間に行けば少し印象も違うかもしれない。
ウービルは凄い人だった。団体客がたくさん集まっていて、ナングールーワーに人がいなかったのと比べると同じ公園とは思えないものがある。
小さい、簡単なタッチで描かれた独特なポーズの人物像がある。足を片方曲げて大きく開いた独特のポーズは「ノーザン・ラニング・フィギュア」と呼ばれ、約5000年前くらいの絵と考えられている。走っている姿にしてもちょっと不自然な姿だ。



ここはX線技法で描かれた魚の絵が有名で、この地域で獲れた様々な魚やカメの絵がずらりと並んでいる。カンガルーも現在インジャラクのアート・センターなどで描かれている樹皮画とほぼ同じ技法で描かれたものがある。

だが、やはり今回は少しマイナーな、線だけで描かれた人物などに興味がある。

遠い岩肌にかかれた、古い技法の虹ヘビがとても面白い。タッチからすると1万年前くらいの絵かもしれない。虹ヘビといっても人物のようなものを骨格のようにしてふんわりとした輪郭があり、小さなカンガルーが二つ入っているという、不思議な絵で、説明がなかったらこれが虹ヘビとはとても思えない。最も古いタイプの虹ヘビはえてしてこういう形であると、カカドゥとアーネムランドの岩絵に関する本にかいてあった。カンガルーの大きさを考えるとかなり大きな生き物というのもわかる。

一番高い岩の上に上ると、前回5月1日に訪れたときには水がかなりあったウェットランドも、すっかり水がひいていた。広大な土地であることが実感される。

虹ヘビは水をあやつり、この地形を作ったと言われている。大きく蛇行しながら流れる川の形はヘビそのものだし、氾濫して人が住む場所を飲み込んでいる。オエンペリも洪水に合い、皆近くの山の上に避難したことがあるらしい。また、虹ヘビは子供の声が嫌いで、虹ヘビの住む場所で泣いたり騒いだりすると目を覚ました虹ヘビに食われてしまうという話がある。子供のしつけのために作られた話かもしれないが、新保満氏の本など読むと、アボリジニは子供に非常に甘く、甘やかし放題だと。それがイニシエーションを受け、大人になるとうってかわって厳しい掟に従って生きなければならなくなる。女性も先ず年取った男の何番目かの妻になり、年上の妻から生活のためのあれこれを教えられることになる。

ウービルから降り、ダーウィンへ向かう。300キロ弱の距離だ。これで今回の旅はお終い。最後になるかもしれないと思うと寂しいものがある。