ブラジル・ピアウィ州、カピバラ渓谷探訪記5

公園に入って4日目。この日は岩山を登って越えていくルートだ。ビジターセンターのある公園の正面玄関から入り、穴の開いた岩Pedra Furadaの横を通ってさらに北に進み、Caldeiräo dos Rodrigues, Canoas e Esperança Trailsと呼ばれるエリアに向かう。公園のゲート近くの水場に蛇と鹿がいた。蛇は毒蛇も多いようだが、この蛇には毒はない。




先ず、岩山を40メートル一気に登る。岩山を迂回していくルートはかなり長く歩く必要があるからだ。岩の隙間に鉄棒のはしごが打ち込んであり、ほぼ、真っ直ぐ登って行くような形だ。


岩山の上はなかなかの絶景だった。皆、深い谷にせり出した岩の端に立つ。私も行ってみたが、高所恐怖症がかなり緩和されていたとはいえ、足をそろえて端に立つのは無理だった。ドーム型の岩山の中にパゴダのような形のものがある。





Caldeiräo dos Rodriguesのエリアに入って、最初のサイトはToca da Entrada Caldeiräo dos Rodrigues。ここの絵は数はさほど多くないが、非常に面白い。初日に訪れたBoqueirao do Pedro Rodriguesのものに似ているし、描かれている動物にも共通性がある。カピバラ、そして大小のアルマジロが印象的だ。網を動物を捕獲しようとしている姿もある。のけぞるような形で踊っている人たちの絵も楽しい。









続いてToca do Caldeiräo dos Rodrigues Iに。岩山が大きく削れたようなダイナミックなサイトだ。ここは体に亀甲模様のようなものが描かれているカピバラの絵で知られている。もうひとつ知られているのは、杭に手を縛られている人物を処刑しているような場面の絵だ。これが戦争の捕虜か何かなのか、あるいは「罪人」なのかはわからない。ペドロによれば、移動を繰り返す狩猟採集社会において老いて歩けなくなった者を殺している場面ではないかとも言われているらしい。そうした事例が実際、ブラジルの部族にあるという。非常に生々しい場面だ。また、そうした場面を絵に残すということはどういう意味があるのか。過去にあった出来事を記録する意味なのか、それとも大人が子どもに何か教えるためのものなのか。












さらに、Toca de Cima do Fundo do BPFという小さなサイト、Toca do Caldeiräo dos Rodrigues IIも見る。

再び鉄はしごで岩山を少し上り、Canoas e Esperança Trailsに入る。
Toca do Caldeiräo dos Canoas I, II, IIに。いずれも小さなサイトだ。





岩山の上を少し歩き、Pedra Furada Trail に入って、Toca do Fundo do Baixäo da Pedra Furadaに。ここは非常に大きなサイトだ。かなり深く発掘調査されている。並んで歩くレアの絵が印象的だ。ヒゲの生えた猫科の動物も描かれている。





続いてToca da Fumaça Iに。様々な動物と人が描かれているが、面白いのは人間が列になって踊ったり宙返りしたりしているように見える絵だ。列になっているのか、それとも一連の動作を説明したものなのかわからないが。赤い鉄分の多い岩肌に白い塗料でかかれたレアの絵も印象的だ。








次にToca do Cajueiro da Pedra Furadaに。大きな岩が二つ、互いにもたれ合う形でゲートのような空間をつくっている。




盛りだくさんだったが、ここで一度公園を出て昼食をとる。
再び、メインの入り口から入り、Moco村の南西のエリア、Hombu Trailに入る。少し高い場所にあるToca do Martilianoに。ここは絵は風化していてほとんど見るものが無い。糸巻きのような形に抽象化された人物像が並んでいる。



すぐ隣にあるToca da Pedra Caidaはその名の通り、大きな岩が傾いて隣の岩山に倒れこんでいる。地形はとても面白いが岩絵はほとんど判然としない。



次に、丸い大きな岩がカエルのように見えるToca da Boca do Sapoに。絵はカエルの口の中にある。素朴な線画がいくつか描かれている。


最後のサイトToca da Invençaoはこれもダイナミックな景観の場所だ。岩絵は白い塗料で描かれた鹿の絵が印象的だ。線も繊細で、比較的新しいものに見える。




ところで、オーストラリアのカカドゥなどと同じく、礫岩から転がり出した方解石の丸石がたくさん落ちているが、中にはなかなか綺麗なものがある。ペドロが透明な方解石のかけらを拾った。ガラスのようだ。初日に訪れた博物館に透明な鏃があり、私は最初水晶だと思ったが、方解石だったようだ。


この日は文字通り山あり谷ありの盛りだくさんの日だった。訪れたサイトは17、岩絵も面白いものがあったが、カピバラ渓谷のダイナミックな景観を満喫した。