ブラジル・ピアウィ州、カピバラ渓谷探訪記7

7月15日は朝早くSao Raimundo Nonatoを出発、Teresina 経由でTeresinaの北東約200キロの場所にあるSete Cidades国立公園に。Teresinaまで8時間、さらに3時間以上かけてPiripiriを経由して行く。10時間以上運転というのはエルビオにはすまなかったが、どうせ一日移動なので、一気に行ってしまったほうがありがたい。Sete Cidadesの公園の入り口のすぐそばにある古いホテルに泊まる。
ブラジルは産油国だが、水力、風力、太陽光発電も盛んで、水力、風力は世界1、2の規模の発電所がある。テレジナとサオ・ライムンド・ノナトの間、往復で巨大な風力発電のプロペラを運ぶトレーラーとすれ違った。自動車燃料もエタノールが多く使われている。



夕食をとりながらエルビオと英語で話しつつ日本語の挨拶などを教えていたら、隣のテーブルで食事していた家族の、十代後半くらいの女の子が話しかけてきた。自分は英語を習っているので通じるかどうか試したいと思って、と。日本にも興味があり、私が話した日本語に気づいたようだ。アニメも好きだし、いつか日本に行きたいと思っている、と。
いろいろ話した後、「日本人は一日10時間も12時間も働くと聞きましたけど、本当ですか?」と。
電通で過重労働を強いられた女性の自殺が世界的に報じられているので、おそらくそれを耳にしたのだろう。行きの飛行機の中で見たニュースのヘッドラインでも取り上げられていた。
「本当なんだよ。もっと働いている人もいる」というと、「そんな体に悪いことを何故?」と。「何故」と思うのも無理ない。おっしゃる通り、おかしいんです。

ホテルは真ん中にプールのある、古い風情のホテルだった。悪くない。


7月16日、朝早くホテルを出て、セテ・シダデスSete Cidades国立公園に入る。Sete Cidadesは英訳するとSeven Citiesという意味。侵食と風化によって出来た塔のような奇岩が並ぶ場所で、それが都市の廃墟のようだというので、この名がついた。それほど有名な場所ではないが、私は子どもの頃から知っていた。エーリヒ・フォン・デニケンの本に出てくるのだ。溶けたような岩肌が何か超古代の核戦争の痕跡ではないかというような話で。

カピバラ渓谷の岩も同じように表面の溶けたような風化の仕方をしているものがあったが、セテ・シダデスのものはよりユニークだ。特に、亀甲状にひび割れた岩肌が独特で、以前写真で見ていたときはてっきり、玄武岩の柱状節理かと思っていたが、堆積岩のひび割れなのだった。ドーム状のものは亀の石、もうひとつは象の姿に見えると言われている。


アーチ状になっている岩もある。「凱旋門」と呼ばれている。

セテ・シダデス国立公園のもうひとつの特徴は岩絵があることだ。カピバラ渓谷のものよりは新しいようだが、やはり数千年前まで遡るもののようだ。明確に年号を記したものはなかった。いくつかの様式はカピバラ渓谷のセハ・ブランカにも見られるものだ。手のひらの部分が渦巻き模様になっている手形など。



小高い岩山の上に登る。カピバラ渓谷の広大な景観を見てきたせいか、ややスケールがこぢんまりして感じる。デニケンが「岩が溶けている」と感じたのも無理ないような不思議な造形が見られる。





この岩絵のパネルはかなり大きかった。記号的な表現が多い。















ガイドをしてくれた男性は公園の敷地のすぐ横で生まれ育ったまさに地元出身の人。帰りに自分の土地に案内してくれた。彼の弟は大工仕事や工芸が上手く、いろんな廃品などを上手く使ったツリーハウスや岩山の上の小屋を案内してくれた。樹型模様の入った木の実を買った。


今回のブラジル取材旅行、これで終わり。岩絵に特化しきった、あまりにストイックな旅行だったが、折角地球の裏側まで来てそれもどうだったのかと少し反省する。