スラウェシ島・洞窟壁画撮影行 3日目

この日はMaros地方から北東のBone地方に移動する。Uhallieという洞窟に行くためだ。この洞窟の絵はナショナル・ジオグラフィックに掲載されたもので、状態の良いアノアの絵が素晴らしく、アクセスが大変だが、是非見たかった。
目当てのLangi村まで車で5時間ほどかかるが、この日は移動だけなので、市場に寄ってもらうことに。海外で市場を見るのは面白い。
あらゆるものが売っているというような大きな市場ではなかったが、魚や野菜類を売っている所を少し見る。驚いたのはつい最近木の実の本のために撮影したサラカヤシの実を売っていたことだ。爬虫類の皮のような肌の実だが、フルーツだったのだ。試しに食べてみると、少し硬いリンゴのような食感で、味は薄いが甘酸っぱい。完熟したらもう少し甘くなるのかもしれないが。少し持って帰って木の実を借りている小林氏に送ろうかと思ったが、どうも乾燥が難しいようだ。それに検疫の問題もある。結局、数日持ち歩いて、帰る前に汁が出てきたので捨てることになってしまった。


アジの干物が売っている。他、珍しいところでは初日に見たパンの木の実、ジャックフルーツ。食べてみたかったが、試しに買うにはでかい。バナナの花も売っている。
北のPosoの市場で見たようなコウモリとか、驚くようなものは無かった。

途中、Dodoが「蝶は好きか?」と。季節じゃないからあまりいないけど、蝶園があるから寄っていこうという。
二日間、きれいな蝶が舞うのを多く見たが、Marosは蝶が美しいことで有名なのだそうだ。特に、蝶園のある村Bantimurungは、「蝶の王国」を意味している。
蝶は数頭しかいなかった。標本を見ると本当に美しく大きな蝶がたくさんある。死んだばかりのメタリックな青い色の蝶を子供がこっそり渡してくれた。本当はいけないんだけど、あげる、と。売ろうとしているのかなと思ったが、そういうことではないようだ。


山に入る手前で、Dodoがトウモロコシを食べていこうと、道沿いの食堂に入る。蒸したての熱々のトウモロコシを一山買って、塩やライムをふって食べる。小さい、味もごく薄いトウモロコシだ。ほとんど甘味はない。成長しきる前の柔らかいものを好んで食べるようで、Dodoが、「うん、これは17才、柔らかいね。あー、これはダメだな、35才だな。硬くて。」などといちいちうるさい。下手に笑うとさらに下ネタに入っていくので面倒なことになる。


山道に入って道も所々悪路になるが、ちょうど舗装工事が進んでいて、思ったよりもずっとスムーズに進む。日暮れ前にLangi村に着いた。
村にはホテルは無いので、民家に泊めてもらうのだが、随分立派な、新しい家だった。これも予想外だった。行く前は電気も通っていない村だと聞いていたが、発電機があり、夜も居間とトイレには明かりがついている。迎えてくれたのは、Uhallieの洞窟壁画を初めてカメラで撮影して発表したAwaluddinアワルディンだ。彼はMarosの学校に通っていたのだが、自分の故郷にもMarosにたくさんあるような洞窟壁画と同じようなものがあると祖母から聞いたことがあるのを思いだし、探しに行ったという。Facebookに掲載したものが話題になり、それを見たオーストラリアの研究者が訪れ、その時に撮られた写真をナショナル・ジオグラフィックは掲載したのだった。てっきりナショジオのカメラマンが撮ったのかと思っていたが。
アワルディンは30代半ばだろうか。南スラウェシには四つの部族がいる。マッカサル、ブギス、マンダー、トラジャだ。マッカサルは部族の名だったのだ。Boneはブギスの地で、アワルディンもブギスだ。アクラムはマッカサル、イムランはブギス。
アワルディンには子供が4人いる。一番下の2人は男女の双子だ。泊めてもらう家は彼の従姉妹の家で、新築といっていい建物だった。奥さんが出てきて食事を用意してくれた。さっきトウモロコシを食べたばかりなのであまり腹は減っていないが、折角なのでいただく。床に並べて、あぐらをかいて食べる。
山盛りのご飯、魚の干物の素揚げが二種類、バナナの花の煮たもの、そして、謎の鳥のソテー、トウガラシの入ったトマトのソース。みんなよく食べる。




食事の後、クーラーボックスに入れてキンキンに冷やしていたビールを飲むことに。宿泊先の家の人は飲まないが、持って行って飲むのは特に失礼にならないと言うので、買っておいたのだ。飲むのは私とイムランだけだが、Dodoが大量に買っていたので、ちょっと飲みすぎて翌日大変だった。
Dodoは手品で客を楽しませるのが得意で、いろんな手品をしてみせる。カードを使ったり、コインを使ったり、なかなか上手いものだ。家の女性たちにも大いに受けていた。
夜、私にあてがわれた部屋は大きな立派なベッドのある部屋だったが、寝具はない。ここは山あいで結構夜は冷える。酔いざめもあり、すっかり寒くなってきた私は重ね着し、シーツをはいでくるまって寝た。こちらの家は屋根と壁の間が空いているものが多い。おそらく暑いときに熱気がこもらないようにだろう。こちらは台風も来ないようなので、暴風雨で雨が家の中にじゃんじゃん入ってくる心配がないのかもしれない。が、風が入ってきて結構寒いのだ。家の子は半ズボン、半袖で床にそのまま寝ているのだが。


飲みすぎて気持ち悪いし寒い。胃薬を二回分流し込んで、さ、寝ようと思っていたら、隣の部屋で奥さんがなにかカチャカチャやっている。まさか....と思っていたら、アクラムが、「夜食の用意ができたよ」と。
ご飯?さっきあんなに食べたばかりじゃないか。無理だろう。でも、 アクラムが「食べないと失礼になるから」と。わかりました。じゃ、形だけと思ったが、みんなしっかり食べている。ご飯と焼きそば(ミーゴーレン)をまぜて 一緒に食べたり。よく入るもんだねと感心。ちなみにこちらの人は汁物以外手で混ぜて食べる。
もう腹ぱんぱんになって吐きそうな感じで床についた。明日は約6時間の山歩きなのに、こんなに飲むんじゃなかったと反省しつつ眠る。