南アフリカ岩絵撮影行 3日目

やはり3時過ぎに目がさめる。

朝食は8時からとちょっと遅い。あれこれしながら起きていた。朝日が山脈の岩峰にあたって美しい。ダーバンで見た猿がグループでうろうろしている。昨夜はカエルの鳴き声がすごかった。ここは池の真ん中にせり出した特別なコテージもあるのだが、あのカエルの声を聞いた感じでは、夜はかなり辛いに違いない。

 

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さて、ようやく8時になって朝ご飯を食べに...と思ってドアレバーを回すとそのまま外れて床に落ちた。外国の宿でドアノブが外れるのは初めてではない。なんとなく、突っ込んで、外に出て、もう一度部屋に入ろうとしたら、もう開かない。受付で、「ええと...ドアノブが...」と言うと、白人の壮年女性たちが「それは大変、すぐに修理担当を」と、トランシーバーで連絡。レシーバーの向こうで「すぐに行きます」と言う声が聞こえたが、外でいくら待っても来ない。もう一度受付で「来ないんですけど...」と言うと、「まぁ、なんてことでしょう」と彼女たち。再びトランシーバーで「もしもし、お客さんが待ってるんですけど?」というと、「今、ちょうど行くところなんだ」との声。あきれ顔で、「今、ちょうど行くところなんだ、そうです」と。「直してもらう間、朝ご飯を食べてていい?」と私。二人の女性が声をそろえて「もちろんです!」と。食券を持って外に出ていてよかった。これが明日だったら、ツアーに出られないところだった。

宿泊客は多いのだが、なぜか食堂はガラガラだ。皆自炊なのか? コテージには立派なキッチンがついている。普通食券をもらう朝食というのはビュッフェかコンチネンタルとかなのだが、メニューを出して来て、何でも頼んでいいらしい。珍しいので、イングリッシュマフィン・ミンスミート、を頼む。

ちょっとすると、大柄な黒人女性がばつが悪そうに「ミンスが.....」と言うのだが、声も小さくよく聞き取れなくてミンスがどうなのかがよくわからない。時間がかかるのかな? そもそもミンスって何だっけ? 

こちらに来て、黒人女性、いや、男性もとても声が小さく感じる。シャイなのか、その声の大きさが普通なのか。結局来たのはミンスじゃなくて、ベーコンが挟まっているマフィンだった。美味しかったが。

食べていると受付の女性が来て「完璧に修理しました」と。部屋に戻るとノブがガチガチに固く固定されていた。

宿を出て、近くのスーパーマーケットに寄る。入り口に黄緑のカメレオンがいた。例のゆらゆら行きつ戻りつするようなカメレオンの歩き方で、スーパーの入り口で「朝日のあたる家」を弾き語りしている兄ちゃんの歌に合わせて進んでいるような感じでおかしい。

 

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宿に行く途中に見えて気になっていた松の木を見る。大きな松ぼっくりがたくさんついている。アフリカに松なんてあるのか? 二つ三つ拾って、今制作中の木の実の本の著者二人に写真を見せると、二人とも欲しい!と。どうもフランスカイガンショウという種類で導入されたものらしい。よく見ると、近くに多く植えられているところがある。

 

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今日は岩絵を見る予定はなかった。ひとつ北側にある渓谷のDidimaという場所に岩絵の博物館というのがあって、映画などを上映していたらしいが、どうも最近閉鎖されたようだ。博物館は閉鎖されても、写真を見ると、岩絵もあるように見える。また、岩絵がみられなくても、そのCathedral Peakという山の麓の谷は風光明媚で知られ、レインボー・ゴルジュという渓谷を歩くコースはDrakensbergで最も美しいとあちこちに書いてあったので、今日は軽く歩いて疲れをためないようにしようかなと。

Didimaに着くと、やはり博物館は閉鎖されていた。レセプションのあるメインの建物も屋根をふきかえるなど、大きな改修工事をしている。「渓谷のハイキングをしたいんですが、地図とかありますか?」と受付に尋ねると、「あそこにいる山岳ガイドに聞いて」と。

その山岳ガイドの机には岩絵の写真が複数載った、岩絵サイトの案内らしきものが。「ここから岩絵を見に行くことができるの?」と尋ねると、「できますよ、今からでも行けますよ」とごく静かに言うではないか。聞いてしまった以上、行かざるをえない。彼の勧めもあり、マッシュルーム・シェルターという所に行くことにした。他にも8つほど岩絵サイトがあり、朝早く出れば複数見られるようだが、丸一日機材をしょって山歩きはかなり大変だろう。

マッシュルーム・シェルターは往復3時間ほどの場所だという。この名は検索して知っていたが、ここからガイドつきで行けるとはどこにも書いてなかった。どうしてこう情報が少ないのか。

今日はほぼ晴天に近い天気で、とても暑くなって来た。渓谷沿いの道はたしかに風光明媚で気持ちのいい場所だが、やはり機材が重すぎて結構辛い。途中、赤と青のカラフルなバッタを見た。オーストラリアの北部にいるやつと似たような色だが、腹がシマシマであまりバッタっぽくない。羽も短い。

 

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ガイド氏は英名がワイズマンで、ズールー語名の訳なのだそうだ。彼もまたとても声の小さい人だ。

マッシュルーム・シェルターの名は岩山の形状からとられたもで、よくある名前だ。シェルターのある岩山がキノコの傘のように見えるということだが、ここはそうでもなかった。絵は比較的少ない。しかも岩の間から染み出した水が絵のパネルの中央を流れ落ちているため、かなりダメージがある。かつて岩絵をクリアに見るため、写真をとるために絵を濡らすということが頻繁に行われていて、そのためにカビが生えるなどしてかなり損傷したということもあるようだ。だが、残っている部分はとても繊細で良い絵だ。

エランドの顔が優しい、とこかマンガのような目をしている。

 

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右側にはエランドの霊を取り込んで変身しているシャーマンの姿が二つ。

 

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集落にライオンが入って来て大騒ぎになっている絵もある。同じテーマの絵が昨年訪れたアルジェリアにもあった。

 

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帰りに滝のあるプールに寄る。滝といっても水がチョロチョロという程度だった。夏は本来もっと水量が多く、池で泳ぐ人も多いのだそうだ。雨が降らなくてラッキーと思っていたが、地元はそれどころではない。干ばつに近い状態で、水が枯れて牛が多く死んでいるエリアもあるという。この冬も雪が降らなかったら、来年はさらに大変だ。

 

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こちらでインド系の人に会うことが多いが、聞けばダーバンにはインド人のコミュニティがあり、かなりの人口があるようだ。

Didimaキャンプに戻り、ワイズマン氏のアドレスを聞く。彼は個人でガイドをしているらしく、客がいなければ商売にならないと。そういう人がいるのだから、もっと紹介するサイトなどがあっていいと思うのだが。このへんのキャンプ場やガイダンスをしているKZW Wildlifeという政府系の団体に何度も問い合わせたが、返事が全くなかった。トリップ・アドバイザーとかに書いてもいいかときくと是非頼むとのことだった。

酒屋でビールを買い、宿に戻り、早く寝る。明日は朝早くから歩くのでしっかり休まねば。