タッシリ・ナジェールの旅 3日目

 予定通り6時半くらいに朝食、7時過ぎに出発。朝食は前回と同じでバゲットにチーズや蜂蜜やピーナッツバターなど、好きなものを塗って食べる。

 タッシリ・ナジェールは堆積岩の台地だが、下の方は花崗岩が多い。ピンク花崗岩など、タイプも複数あるように見える。水晶の脈が入っているものも少なくない。ジャーネットの町は標高約1000mほど、台地の上は1700mある。登りは思ったほど急勾配ではなかったが、それでもよじ登るような岩場もある。今回トレッキングポールを持参したが、これはかなり役にたった。ここ数年足がぐらつくことが多くなっていて、南アでもそれで岩から落ちた。支えがあるのと無いのとでは大違いだ。

 登り始めて1時間ほどくらいでスコットランド人のローマンの足が完全に止まってしまい、これ以上は無理だろうという判断になった。アンドラスが下まで送っていく。ツアーの募集の説明ではどの程度の脚力が必要なのかなかなかわかりにくかった。ある程度の山登りが出来る人という限定をつけるべきだと思う。

 

 ちょうど中間くらいで平坦な場所に出て、ある程度歩いた後、さらに急な登りになる。日程表では台地の上まで3時間とあったが、昼食も含めて7時間かかった。人数が多いとどうしても余計に時間がかかるが、3時間と予定するのは無理がある。荷物を運ぶロバたちは途中から全く違うルートを通る。岩をよじ登るような所は通れないので、凹凸の少ない、急な斜面を登っていくのが見えた。

 

 

 台地の上に上がると見渡すかぎり平坦な地面が広がっている。時間が押してしまい、結果、Tan Zumaitakには行かないということになった。これは辛かった。タッシリ・ナジェールの壁画の中でも最も見事なものがある場所の一つだからだ。このツアーは未開拓の場所に行くのを優先するので、有名なサイトが後回しになりがちだ。ただ、メンバーの半数は台地は初めてなので、良い条件で有名な壁画の写真を獲りたい者にとっては嬉しくない。そんなに頻繁に来れるような場所ではないのだから、保存状態の良い、見ごたえのある絵の場所でそれなりにきちんと時間をとってほしい。

 

北上してTamritへ向かい、有名なアンテロープの絵を見る。1950-70年代に調査したアンリ・ロート隊の複製画にはアンテロープは10頭描かれているが、肉眼では5頭も見えない。帰国後に写真を壁画の画像補正ソフトDStretchにもかけてみたが、10頭までは確認できなかった。ロート隊は壁面を水に濡らしてトレースしたのだが、水に濡らすとそこまで浮かび上がってくるものなんだろうか。

Tamrit, Tassili n'Ajjer

 タムリットの枯れ川Wadi Tamritで大きなイトスギを見る。タッシリ・ナジェールの固有種で樹齢2000年以上のものが多いということだ。雨のほとんど降らない場所でこれだけの巨木が生き続けていることは驚きだ。

Wadi Tamrit, Cypress

キャンプ地に着いた後、荷物を下ろしてTamritの別のサイトを訪れる。

イヘーレン様式の戦闘の場面なのだが、やはりなかなかわかりにくい。赤いドットが連なっているが、これはロート隊の複製画を見ると羊の群れの頭部のみを描いたものらしい。人間は体に模様が入っていて、これは刺青を示しているのかもしれない。

 

Tamrit

 

この日は山登りもあったのでかなり消耗。だが、登りを無事クリアしたので、一安心。

歩行距離は17.5キロ