コロンビア・アマゾン壁画紀行 その7

 ツアーの最終日。Nuevo Tolimaという壁画サイトへ行く。初日のスケジュールに無理やり入れられそうになった場所だ。農場を横切って岩山に登る。こうした農場もかつてコカ畑だったのだとサンチアゴが。

 山へ行く途中、背の高い椰子の木に巣をつくっている緑色のコンゴウインコがいた。コンゴウは岩のすき間に巣をつくると思っていたが、椰子の幹に穴を掘るタイプもいるのか。

 

 

 Nuevo Tolimaの壁画の前は他のサイトと違って広く、平坦で、ここがパノラマ合成用の撮影には最も向いていたが、この日は機材を持参しなかった。それどころか、なんとカメラにバッテリーが入っていない(!)。昨夜ホテルを移動して、バッテリーを一度出して充電したのに、入れるのを忘れている。いきなりコンセントがいくつもある広い部屋に移ったことが仇になったというか....単にやることが雑になっていただけというか...。

 さらに、バッグにひとつ予備を入れておいてよかった...と、電池を入れると、なんと少し撮っただけであっという間にバッテリーの残量が少なくなる。入れたときはフル表示だったのだが、気がつくともう目盛がごくわずかに。中国製の互換電池でこういうことはあったが、まさか純正品でこんなことになるとは。手持ちでパノラマ合成用の部分撮影をおおまかに済ませたところで電池が切れた。なんと情けないミスだろうか。カメラマンのアシスタントだったら、ごめんなさいじゃすまされない。

 仕方ないので、できるだけ多くiphoneでディテールを撮っておく。iphoneはかなり解像力が上がっているのだが、やはり大きく引き伸ばして印刷するほどのクオリティーはない。

 Nuevo Tolimaの壁画は一ヶ所、ひとつの壁面だけだ。色の擦れ具合などを見る限りでは、Cerro Azulなどよりも時間が経っているように見える。幾何学模様のパターンが多い、特に雷紋タイプ、ダイヤ型の繋がったものが房状に描かれたものはracimsと呼ばれる。これが並んでいる様はどこか模様の見本帳のようなかんじだ。

 アナコンダもしくは蛇行する川を示すようなモチーフも複数ある。最も大きなモチーフはカピバラだ。長さ約1メートルなので、実物大と言っていい。人型のモチーフも多いが、胴体が異様に長く伸びていたり、指が極端に長く描かれていたり、普通の人間ではないように見えるものも少なくない。

 上部はかなり退色して黄色っぽくなっている。壁面の近くまで大きな木々が迫っていた他のサイトに比べると陽光や風雨の影響は大きい場所だったかもしれない。

 

 

 パネル左上の退色した部分をDStretchにかけてみる。同じような幾何学模様や人物像がくっきりと出てくるが、他の部分との大きな違いはない。重ね描きもそれほど見当たらないので、年代が古くて色あせたというより、やはり雨や陽光による退色なのだろう。

 

 

 Nuevo Tolimaは壁面も一ヶ所で、午後は時間があったので、Puerta de Orión「オリオンの門」と呼ばれる穴の空いた奇岩を見に行くことに。この岩も観光コースに含まれることが多いようだが、当初は予定に入っていなかった。季節によってはこの岩の穴の中にオリオン座がすっぽりとおさまることからこの名がついたのだそうだ。

 

 

 これでツアー会社に頼んだスケジュールは終わりだが、サンチアゴに頼んで、昨夜訪れた先住民のコミュニティに行ってもらうことに。木の実についてもう少し聞きたいことがあったので。

 ワイルーロの他に装飾品に使う木の実がないか聞いてみたところ、カスカベルとイヤーポッドツリーの種を出してきた。山東さんが希望していたMargaritaria nobilisという構造色で瑠璃色に光る木の実の写真を見せたが、見たことがないと。出してくれたものを買い取って帰った。

 現地に着いてからは比較的余裕のあるスケジュールだったが、どうも行きの飛行機の遅延による疲労を引きずって不調だった。今考えるともっと壁画で時間をとってもよかったし、先住民のガイドにいろいろと聞いてみたいこともあったのだが。そもそも地球の真裏に行くのにやはり現地で一週間は短い。