地震-13

カバーデザインを担当した下川裕治さんの本『鈍行列車のアジア旅』(写真=中田浩資さん、双葉文庫)の刊行記念トークイベントを聞きに、西荻窪の旅関係の専門書店「のまど」に。こんな時だけれど、店内は満員、フィリピンで勝手に線路を使って商売している白タクならぬ、白トロッコなどの話と写真に沸く。しばしイヤなことを忘れて楽しいひとときだった。
思い出せば、初めて海外旅行に行ったのは20年前のタイだったが、帰国の日、アユタヤから鈍行列車に乗って、夕日を眺めながらバンコクに帰った。手動ドアの懐かしい車両だった。町に近づくと、あちこちのドアから飛び降りて、走り去って行く人影があった。線路沿いには、新年のイルミネーションが灯るバルコニーがあり、大音量で音楽が流れていた。その音と、列車に充満した食べ物の匂いと、夕日と椰子の木のシルエットが旅の締めくくりだった。

鈍行列車のアジア旅 (双葉文庫)

鈍行列車のアジア旅 (双葉文庫)


3号機の建屋で被曝した関電工の二人のことに関して、管理が杜撰だという批判が出ているが、おそらく現場は疲弊をきわめていると思う。地震が起きてから一度も自宅に帰っていない人も少なくないというし、椅子で仮眠して、食事はカロリーメイトなんていうことを2週間も続けているというのは尋常ではない。もちろん、関電工の二人はそういう立場の方ではなかったかもしれないが、連絡体制や指揮系統に関わる現場の管理者は限界に近い状態だろう。

1次冷却水の1万倍と聞いても、それなりにしか驚いていない自分にも驚くが、かつて、1次冷却水が漏れたというだけでも大事だったはずだ。その1万倍とは。保安院は水の出元はおそらく炉心の燃料棒だろうと言っていたが、使用済み燃料からではなく、炉心からではないかと考える根拠についての説明はなかったように思う。3号機の原子炉に入っているのはプルトニウムを混ぜ込んだモックス燃料なので、とんでもない話なのだが、使用済み燃料にもモックス燃料があるのだろうか。
溜まった水を除いて、除染と言っていたが、これは水をポンプで吸い上げて、おそらく雑巾で拭き取る作業だ。拭き取ってはビニール袋に入れて、丸ごと放射性廃棄物として管理する。他に方法はないだろう。1.2号機のタービン建屋にも水が入っていて、1号機の方は同じく高濃度だとというし、大変な人手が必要に違いない。これが終わらない限り、冷却系のポンプが復旧しないというのは、時間的にとても心配だ。