「パワーストーン」/グリーンマン

lithos2006-07-18

瑪瑙などの石が好きで集めていると、「パワーストーン」なる商売を多く目にする。水晶などを身につけると、こういう力を得ることができます、というような商売で、海外で始まって、日本でも盛んだ。誰が考えているのかわからないが、それぞれの石にいろんな意味が与えられて、なぜか、むこうではこれを「メタフィジック」と称している。ちょっとしたお守りを買うような、軽いまじないのようなものなのだろうが、中には、「ネイティブ・アメリカンの人たちが儀礼に用いていた希少な石で云々」というような能書きを付けて法外な値で売る非常に悪質な商売もある。霊感商法に限りなく近い。
それぞれの石の「パワーをもらう」と、生命力旺盛になったり、愛情が深くなったり、感性豊かになったりするはずなので、石屋は毎日石に囲まれて素晴らしくピュアな良い状態で生きているはずなのだが、いかんせん、石に何か大切なものを吸い取られているのでは、と思いたくなるような、ドローンとした目の人がいる。
イギリスにも、こうした石などを売る、「スピリチュアル」ショップのようなものがたくさんできている。
昨年、「聖なる井戸」があり、アーサー王や聖杯伝説ともかかわりの深いグラストンベリーを訪れて驚いた。目抜き通りにこの手の店が林立しているのだ。
パワーストーン」のほかに蝋燭、お香、仏像(日本の布袋さんの像を「笑う仏陀像」として大量生産して売っている!!!)、ドリーム・キャッチャーのようなネイティブ・アメリカン風のもの、マレーシア製の「アフリカのお面」、ケルト風、北方文化風の模様を彫り込んだプラスチックの置物など。全体にえもいわれぬチープな雰囲気に溢れている。
この手の店には「木の精」であるグリーンマンの像のレプリカなども売っている。イングランドの古い教会にはそうした異教的なルーツを持つキャラクターなどが、天井、いすの裏などに彫られている例が多々ある。『巨石』でも、南西部のコーンウォールの教会の椅子にケルトの三面神像が彫られていることを紹介したが、こうしたもののレプリカが土産物として多く売られているのだ。ほとんどは型に樹脂を流し込んだ、いい加減な作りのものだが、教会建築の修復などをしていた石工の親子が手作りで仕上げている、非常に良くできたレプリカがある。Martin&Oliver Webbの二人が作る、グリーンマンや天井飾りなどの彫刻のレプリカは教会の修復に携わり、自ら記録をとった者でないと作れないクオリティーのものだ。ウェブ上で商品写真を見るだけでも、本来、教会建築のおまけ、大工たちの遊び心の表れともいえるような天井飾りに実にバリエーションに富んだ創意があることがわかり、面白い。彼らはこのブログでも書いたフランスのガヴリニ島の石器時代の通廊付墳墓内の石彫を、ひとつひとつリアルに復元して売っている。グリーンマンのレプリカのひとつを、国書刊行会から出ているフレイザー金枝篇』の装幀に使わせてもらった。
http://www.finestoneminiatures.com/index.htm