食べても食べても

lithos2006-07-14

猫の認知症というのはあるのだろうか。事務所に住んでいる雄猫のトントの食欲が尋常でなく、怖い。
もともと食い意地のはった猫だった。12年ほど前に石神井公園に7匹捨てられていたうちの一匹だったのだが、兄弟の中で一番小さく、やせて発育が悪かった。
箱の中で他の猫に踏み台にされていた。おそらく、母猫の乳も満足に吸っていなかったのだろう。
ところが拾ってきたらば、食べる食べる。異常なほどの食欲で、餌を出してもらうのが待ちきれずに、キャットフードの入った戸棚に頭から飛び込んだこともあった。
この飢餓感は赤ん坊のときに満足に食べられなかったというトラウマによるもんだな、などと言っていたが、冗談ではなかった。普通の猫の3倍くらい食べるので、餌代が大変だったのだ。体もむくむく大きくなり、腹を出して仰向けに寝たりしていたので、打ち合わせに来た客が「これはどういう動物ですか?」と、真顔できいたりしたことがあるほどだ。
エイズのキャリアになってしまい、歯が抜け、酷い口内炎が治らないのだが、ここ一ヶ月ほど、食べた直後に、「メシは? まだ食べてないんスけど」といった鳴き方で、激しく要求する。その雰囲気がちょっと普通でない。認知症の老人が食べたことを忘れて要求するというような話をよく聞くが、猫にもあるのではないだろうか。食べているとき以外はほとんど寝ているので、他の面から推し量ることができないのだが。