「石に呼ばれて」はいません/擬態

lithos2006-08-22

今週の『週刊東洋経済』で、写真家の中川道夫さんが拙著『巨石──イギリス・アイルランドの古代を歩く』の紹介をしてくださった。写真を撮るのは好きなのだが、そもそもきちんと一眼レフに習熟することがなかったし、ここ数年ほどは、旅行のとき以外はほとんどフィルムカメラに触らなくなっていたので、いざというときにドタバタとポジで撮影すると、大失敗の山であった。本で掲載した写真もプロの目で見れば甘いところが多いと思う。「丁寧に撮られた写真」と書いていただいて恐縮至極だ(ただ、私自身は「あとがき」でも書きましたが、巨石と「スピリチュアルなもの」との関連については、あまり興味がありませんし、「石に呼ばれた」こともないと思っています)。

ずっと義母の具合が思わしくないので、子どもの夏休みに全くつき合えないのだが、今日は仕事場に近いので池袋のサンシャインに「大昆虫展」を見にいった。自宅の裏の林で例年になくカブトムシが多く発生していて、毎朝行けば見つかる状態なので、娘がすっかり虫好きになってしまったのだ。私も好きではある。以前から昆虫の擬態にとても興味があるのだが、私が好きなユカタンビワハゴロモの標本が多く展示されていた。ユカタンビワハゴロモは頭が異様に膨れ上がったハゴロモで、ふくれた頭がワニのように見えることから、地元では不吉な虫とされていた。羽には大きな目玉模様が二つついていて、全体に呪術的ともいえる造形を成している。この、ワニに似ている形が効果のある擬態といえるのかどうかということは議論があったようだが、今日の展示では蛇の頭に擬態している、という紹介だった。確かにそうも見えるし、そうであれば、サイズからしても納得のいく説明に違いない。同じく蛇に擬態している虫として、巨大なガ・ヨナクニサンが展示されていた。羽の先端が蛇の頭そっくりなのだ。他にも枯れ枝や枯れ葉に擬態したナナフシや、鳥のフンに似せた虫、奇怪な形のツノゼミなど、面白い標本がそろっていて、なかなか見応えがあった。娘よりも私の方が楽しんだかもしれない。昆虫の造形と色彩のバリエーションの多さをみると自然淘汰という考えは本当に妥当性があるのかという疑問も湧いてくる。

以下にユカタンビワハゴロモの画像が。
http://contents.kids.yahoo.co.jp/zukan/insects/card/0601.html