中米最古の文字

メキシコで中米最古といえる文字が出土したらしい。
http://www.saitama-np.co.jp/news09/15/05i.html
オルメカの遺跡の中から出たのだそうだ。紀元前900年ころのものらしい。なんとも素朴な、甲骨文字をもっと素朴にしたような文字だ。オルメカは謎の多い文明だけれど、この文字がオルメカの文字だとして、マヤなどの後続の諸文化に受け継がれ、発達していったのだろうか。だとしたら、甲骨文字はより抽象化されて漢字になっていった(と、こんな乱暴な言い方をしていいのか自信ないですけど)のと逆に、マヤやサポテカなどの、より具象的な文字に発展していったのだろうか、それともオルメカとその後の文化は不連続なのか、興味深い。下はマヤのパレンケ遺跡に残る文字だけれど、顔のリアルなこと。額から鼻筋まで直線的につながっているのが高貴な顔立ちとされ、いわゆるマヤ・フェースと呼ばれる。王族などは幼少時から顔に板を当てるなどして、このラインを意図的に作ったりしていたようだ。

この「最古の文字」についてもう少し詳しい情報はないのかなと思い、ネットを調べていたら、面白い話がでてきた。近年、アメリカのオクラホマ大学で教える許輝教授という人が、著書『オルメク文明の起源』の中で、オルメカの文字は殷王朝の文字と同じであり、周に追われた殷の末裔がオルメカ文明を作ったという説を展開しているらしい。この人が論拠にしている文字というのがどういうものなのか、ネット上のリンクが壊れていたので、わからなかったが、これまで、オルメカの文字というのは確認されていないはずだ。彼と協力者である陳漢平氏によると、それらのオルメカ文字は十分に読めるもので、あるものは、「君主建山川」、統治者と指導者が王国の基礎を確立した、というものらしい。何もそんなに世界中を中国起源にしなくても.....、と思うのだが、中南米文化というのは、長らくそうした「外国起源」説にいいように扱われてきた感がある。アメリカ大陸の先住民は古代ユダヤの所謂「失われた十部族」の末裔だと説明している有名な教団が北米のユタ州にある。「中華思想」は中国に限らないのだ。メキシコのケツァル・コアトル伝説、南米のビラコチャ伝説など、「白い」人が文明の基礎を作った(そして、再び帰ってくると告げて去っていった)という話は、初期の植民地政策にも大いに利用されたのだが、今はデニケンに始まってハンコックなどの宇宙人起源説など、宇宙規模の「中華思想」にも発展している。宇宙人を持ち出してまで、そんなにも中南米の先住民が独自に作った文化だと、認めたくないのか?
ちょっと変わったところでは、植民地時代の初期には、「ウェルシュ・インディアン」という、ウェールズ語や英語を話すインディアンの話がまことしやかに語られていたという。中世のウェールズの王子が新大陸に渡っていて、子孫が生きていたという話だ。英語を話すインディアンと会ったというような体験談が数多く流布し、探索隊もつくられたらしい。こうした話は新大陸の所有権がスペインよりもイギリスにあるのだという(コロンブスよりも先に行ってたんだからね)、当時の覇権抗争とともに盛り上がり、真剣に議論されたようだが、もちろん、証拠らしきものは出てこなかった。
そういえば、東北にユダヤ人の子孫が住んだと言われる場所があり、イエスは日本で亡くなったという話があるが、こうした話を元にした諸星大二郎の漫画「生命の樹」を映画化した「奇談」はショボかった。漫画に忠実であろうとしていたが、絵が全然怖くなかった。一度映画化してしまったら、なかなか同じ原作で映画は作れないのだから、やるならもうちょっとなんとかしてよ、と、思ってしまったなぁ。

私のメキシコ関連の写真ページも是非ご覧ください。「解説を書きます」としたきり、全く手つかずになってますが、近々、なんとかするつもりです。

http://www.lithos-graphics.com/maya/mayatop.html