なんで飛び級がダメなのか?

目下、娘の最大の関心事は水泳なのだ。
3月末生まれ故、同級生に比べて体もずっと小さく、はっきり言って学校の勉強は、ほとんど塹壕に入って頭を低くして弾に当たらないように息をころしている状態なのだが、昨年の夏に一緒にプールに行き、水泳教室に通い始めて以来、水泳だけは自信をもっている。
娘の通っている学校は体育で水泳の授業はあるし、夏休みもプールを解放しているが、水泳をきちんと教えることはしない。「皆が泳げるようにきちんと教えることはできません、けど、水泳の授業はしますし、級も与えます」という方針なのだ。ちゃんと教えないのに進級試験などするというのも変だが、まあ、限られた授業時間内で教えるのも大変なんだろう、と、思っていた。私が通っていた小学校には非常に熱心な、グリコのキャラメルの箱にかいてある人のような印象の、胸板の厚ーい体育の先生がいて、夏休みの間ずっと水泳教室をしていた。もちろん、義務ではなかったが、楽しかったので、多くの生徒が通い、6年の終わりには、クラスのかなりの生徒が2500メートル泳ぎきる、特2級になっていた。私も途中何回か足をついたが、2500メートル泳ぎ、「ま、いいだろう」ということで、級をもらって卒業した。こんな熱心な先生はそうはいないだろうし、期待しても仕方ないだろうなと、思う。
娘は昨年の夏は泳げなかったし、父親が巨石探訪旅行に連れ回していたので、プールにもあまり通えなかった。級は8級という「水に頭を浸けていられる」みたいな級のままだった。それが、一年経って50メートル泳げるようになったので、進級テストの折に、50メートル泳ぐ3級の試験を受けたいというと、「何言ってんだ? まだ8級でしょ、次は7級の試験を受けなさい」とのこと。娘が昨夏はほとんどプールの試験が受けられなかったし、今はずっと泳げるんだから、実力にあった試験を受けさせてほしいと、もっと稚拙な言葉で騒ぐと、うるさいなぁ、じゃ、やってみなさい。ということで、一気に3級に上がって、得意満面で帰ってきた。
だが、娘と同じような要求をしても、「だめ、級は一つずつしか上げません」という教師がいるという。学校が水泳の授業を一貫性をもってやっているならともかく、どうせみんな水泳教室とか行くんでしょ、そっちでおぼえてくださいな、というような態度で、きちんと教えもしないけど進級試験だけはする、しかも飛び級は認めません、というのは何なのか? 「そうか、お前はそんなに泳げるようになったのか、じゃあ、やってみな」というのが正しい先生の態度だろうと思うのだが、なんだか今の学校はよくわからない。娘と同じクラスの女の子はがんばって50メートル泳ぎきったのに、教師が飛び級は認めませんというお役所的対応で、ひどく落胆していたらしい。