出久根育さんの個展

土曜、銀座に画家の出久根育さんの個展を見に行く。最終日だった。現在プラハ在住の画家で、我が家は夫婦共に大ファンなのだ。今回は昨年出版された絵本「マーシャと白い鳥」の内容に沿った(でも、原画ではない)ものだった。数年前に見たホフマンの「砂男」をもとにした連作版画は非常にモダンかつポップな怪奇という感じだったが、昨年、そして今年はロシアの民話をもとにしているだけあって、色遣いもタッチも、本当に東欧の民俗美術の中から生まれてきたかと思うような熟成感のあるものだった(我々よりも年下の東京生まれの普通の日本人なのだが.....)。また、今回出品された一枚の絵に、なぜかベン・シャーンを思い起こさせるものがあった。どことは言い難いのだが、少女の赤い頭巾、全体の遠近感に、どこか「赤い階段」や題名は忘れたが、ブルックリンでローラースケートをする子どもたちの後ろ姿を描いたものなどに通じるものが...。
出久根さんがかつてワークショップに参加したというスロヴァキアの画家(日本では絵本作家として有名だが)ドゥシャン・カーライにもやはり通じるものもあるが、カーライ氏の工房には数多くの日本人が参加していて、「日本人率」が非常に高いらしい。シュヴァンクマイエルのファンも日本人率が非常に高いが、チェコ、スロヴァキアの民俗的様式を含んだ幻想美術は日本人好みなんだろうか?
カーライの「不思議の国のアリス」「鏡の国のアリス」は昔新潮社から高価な絵本として出版されたが、絶版状態でなぜか全く中古市場でみかけない。おそらく部数も少なかったのだろう。原作のテキストから大胆にイメージを広げた、ボッシュの「地上の楽園」にも通じるような世界で、とてもいい本なのだが。今、気づいたが、アマゾンでこの本を検索すると、リストと該当頁とのリンクが間違っているか、もしくは間違った本のレビューばかり載っている。「ドゥシャン・カーライ」で検索すると「不思議の国のアリス」がリストアップされるが、リンクを開くと金子国義やオリジナルのテニエルの挿絵の別のアリス本のレビューが載っていて、わけがわからない。ちゃんと著者名の欄に画家名を入れないからこういうことになるのだろう。絵本で原作者の名前だけ表示されても、どの本なのか特定できない。

あめふらし (絵本グリムの森)  マーシャと白い鳥 (世界のお話傑作選)