秋分の日の朝日が入る遺跡

『巨石』でアイルランドのボイン渓谷に残るNewegrangeやKnowthの内部の写真を借してくれたマイケル・フォックスが、秋分の日の朝日が Loughcrewの石室内に入り、奥の、太陽や星を象ったように見える彫刻のある石盤を照らしている写真を送ってくれた。彼はアイルランド東部のNewgrangeやKnowthなどの通廊付石室墓という、独特な形式の遺跡群を紹介するよくできたサイトKnowth.comを主宰している。今回送ってくれた写真はまだ公開はしていないようだが、引用してもいいかどうか、聞いてみたい(その後、写真を掲載したページがつくられたので、リンクを貼っておくことにする)。
http://www.knowth.com
http://www.knowth.com/loughcrew-equinox-sept06.htm


アイルランドスコットランドなどの石室墓の多くは、夏至冬至春分秋分などの朝日が入り口から入って、内部を照らすように作られている。こうしたことは60年代までは考古学界内部ではあまり論じられてこなかった。正面から取り上げることを避ける研究者が多かったし、そうした設計そのものを疑う人も少なくなかった。現在、それらの遺跡の構造上の仕組みを疑う研究者は少ないだろうが、どの程度の厳密性をもって設計されていたのかという点では、議論の幅が大きいようだ。Loughcrewの遺跡と春・秋分の日の朝日との関係は、アイリッシュアメリカ人のアマチュア考古家マーティン・ブレナンが初めて調査したのだが、石室奥の太陽を象ったマークをピンポイントで日が照らすと報告されていた。写真も撮影されている。今回マイケル・フォックスが送ってくれた写真を見ると、確かに、そのマークに日が当たっているカットもあるが、岩絵全体に日が当たっているものもある。日の光が入り口から石室に入って、奥の岩を照らすというのは、疑いようもなく、仕組まれたものなのだろうが、岩絵のごく一部分だけに日が当たるようにつくられているというのは、どうなんだろう。損傷の激しいLoughcrewの外観を見ても、そこまでの厳密性を実現する機能があったのか、また、残っているのか、やや疑問ではある。