メキシコ行き/写真にカビが

夏にメキシコとコスタリカに行くことにした。メキシコは三度目だ。自分だけ一週間間先に行き、後から家族と合流することにした。一人でユカタン半島の中の遺跡を、細かく回って写真を撮ることにしたのだが、
写真を撮ってどうするか、特に決まっているわけでもない。
15年ほど前、初めてメキシコの遺跡巡りをしたときの写真も、いくつかの書籍の装幀や口絵には使ったが、久しぶりに見てみると、カビが出ているポジが少なからず見つかった。湿気取りを入れてはいたが、ポジを保存していた仕事場の一階の作業室はとても湿度が高いようだ。湿気取りも定期的に替えているのだが。本も長く置いておくと、全体にカールしている。フィルムはカビるし、退色する。美しい神殿のレリーフのほぼ中央にカビが丸く根を張っているのを見て愕然としたが、これも15年余という年月の経過に見合った状態ともいえる、写真があせていくように、記憶もまた少しずつ薄れていくのだから。でも、今後デジタルデータが蓄積されていくと、物質的な「古さ」に接する機会も少なくなっていくだろう。自分の親の子供の頃の画像が、撮ったばかりの画像と同じように鮮明に保存されているような時代には、時間の経過に関する感覚も変わってくるに違いない。