産業が生み出したメノウ

lithos2007-05-25

アメリカのebayに面白いものがアップされていた。フォーダイトという名のメノウだ。デトロイト産のメノウと書いてあるので、聞いたことがないなと思い、詳しく説明を見て大笑いした。自動車工場で生まれた「メノウ」だったのだ。そもそもメノウは冷えた溶岩中の細かな空洞や、堆積岩中の隙間などに鉱液が流入して出来るが、いろいろな模様のバリエーションが生まれる仕組みは完全にはわかっていないようだ。少しずつ、様々な成分を含んだ鉱液がしみこんで、カラフルな層状の模様ができるということもあるが、この「フォーダイト」は北米有数の自動車産業の町デトロイトの、おそらく名前からするとフォードの工場の中で生まれた「メノウ」だという。現在は閉鎖されてしまった古い自動車工場の外装の吹きつけを行う工場で、長年にわたって様々な色のペイントが行われていた副産物として、硬く層状に堆積した塗料の塊ができる。これを小さく切り取って磨いてみたら、エナメルでコーティングされて、なかなかきれいな模様と光沢があるので、宝飾の素材として「フォーダイト」という「メノウ」として流通したのだというのだ。フォードの自動車工場で生まれたメノウのような綺麗な「石」だから「フォーダイト」とは、いかにもアメリカらしい話だ。この「石」は、80年代以降、多くの工場がメキシコなどに移転する前の、アメリカの産業をリードしてきた自動車工場の「地層」から見いだされたものだ。これを磨いて宝飾に使ってしまうところがまた、アメリカらしい。