浅川マキ訃報

お風呂で倒れてそのままとは...。でも旅先の宿で亡くなるというのは、どこか彼女の歌の世界に似ていると、言えなくもないかなと、思ったのだった。
ここ15年以上ライブに行っていなかったが、80年代前半に繰り返し足を運んだ。83年だったか84年だったか忘れたが、本多俊之後藤次利向井滋春らと一緒に演ったステージはこれまで自分が聴いた全てのコンサートのなかでもベストのひとつだと思っている。
彼女ほどいろんなタイプのミュージシャンと共演した人は珍しいんじゃないだろうか。コンサートでも気に入った共演者に好きにさせるところがあって、そのためステージが共演者の質次第といったところがあった。最後に聞いた二、三回がどうにも好きになれず、途中で出てしまったこともある。声が出にくくなっていた時期でもあった。
その後、こちらも結婚し、子どもも出来て、なんとなく足が向かなくなった。彼女の歌を特別暗いと思ったことはあまりないし、ライブはたいてい誰かと一緒に行っていたのだが、小さな子どもがいる「所帯持ち」と「浅川マキ」はなんとなく重なりにくい。
昨年、彼女の名カバーである『それはスポットライトではない』のオリジナルが入っているバリー・ゴールドバーグのCDを聞いた。佳曲そろいのいいアルバムだったが、『それはスポットライトではない』は、オリジナルより浅川マキのカバーの方がずっといいなと、『灯ともし頃』をLPからCDに落とした。
ここ三年、仕事場で一人になった。一人になると彼女の歌が聞きたくなる。久しぶりにライブに行ってみようかと思っていたところだった。
本当に淋しいけれど、仕方ない。