南アフリカ岩絵撮影行 6日目

(一度書いたのだが、パソコンが壊れたため再び。)

今日は満を持してGame Pass Shelterへ。やはり雨降りなので本当にガイドが来るかも心配だったが、途中の道が気になる。昨日もハンドルをとられるほどぬかるんでいたが、昨夜はかなり降っていた。路面はもうすごい状態になっているだろう。車は普通の乗用車なので、ぬかるみや轍にはまってしまう可能性がある。

問題の場所に着くと車が詰まっている。見れば大きな牛乳を運ぶトレーラーが道から滑り落ちているではないか。重い車だから一度滑り始めたら止まらないだろう。大きなトラクターがロープで引っ張り上げようとしているがどう見てもパワーが足りない。幸い、トレーラーの脇をなんとか通れた。道を塞いでいたら辿り着けないところだった。

Kambergの受付に着くと昨日と同じ女性が、ガイドを呼びに行ってくれた。何はともあれ、サイトまでガイドしてくれるようで、よかった。ここで予備日をとっていたのも正解だった。

先ず、短い映画を観るが、これがなかなか良くできていた。このエリアにサン人がいなくなったのはほとんどもっぱら白人の入植によるものだ。狩場を失って放牧された牛に手を出し、そのために殺され、投獄されるという構図はフエゴ諸島のセルクナムやオーストラリアの先住民とまったく変わらない。19世紀半ばには南アから消えてしまった。現在、サン人の風習を一部受け継ぐ部族がほんの少しいるようだ。

 

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ガイドは25歳の若い子で、彼ともう1人が交代でやっているらしい。途中、滝の裏側にあるシェルターを抜ける。ヒヒの群れが雨宿りしていたようだが、文句を言いながら立ち去った。そこにも少し岩絵があったが、かなり不鮮明だった。

 

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この後は岩山の上まで一気に上がる。遠くを駆ける動物がいて、小鹿かなと思ったがなんとウサギだという。かなりの大きさだった。Game Pass シェルター周辺はフェンスで厳重に閉じられている。

サイトに入ってすぐにここの絵がいかにすごいかわかった。保存状態がいいだけでなく、絵そのものがとても良いのだ。エランドの群れとシャーマンたち、その周りに跳ねるように描かれたハンターたち。横一列に描かれたメインパネルと、その左側のスペースにはここがサン人の「ロゼッタストーン」と呼ばれる所以であるところの絵がある。

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エランドの後ろで手を当ててエランドの霊を取り込んでいるシャーマンの姿。エランドの後足はクロスしていて、死にかけていることが示されている。シャーマンの足もシンクロしてクロスしている。シャーマンの足は蹄になっており、彼が変身しつつあることが示されている。その右には完全に半人半獣になったシャーマンの姿がある。

 

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この絵は入植後、サン人がこの地にいなくなってから約100年後の1950年代に「発見」された最初の岩絵だ。このシャーマンの姿から、岩絵が彼らの生活風景を描いたものではなく、霊的な世界を表したものであることが確認された、という意味で「ロゼッタストーン」と呼ばれているのだ。

雨降りは不運だったが、一人で来れたのは良かった。気兼ねなく写真を撮って、そろそろ終わりというとき、岩から降りる際、足が引っかかって落ちる。膝を思い切り打ちつけた。

ガイドくんがびっくりしてOh, sorry と言いつつ駆け寄って来ようとしたが、「大丈夫、大丈夫」と。あまり大丈夫ではなかった。 下山する途中も足がガクっとなるたびに、oh, sorry...と。君のせいじゃないから、あんなところで転ぶ方が悪いんだから。
 
なんとか事務所まで戻ったが、これは明日の山歩きは出来そうもない。Drakensbergの南端に近いSani Passという場所に宿をとっているがこの感じではそこに行く意味もあまり無い。 連日の歩き疲れで足がぐらぐらしていたのに加えて慣れない厚底のトレッキングシューズで感覚が合わなかった。それにしても以前であればこんな落ち方はしなかったはずだ。嫌だ嫌だ、歳をとるのは。
途中、薬局を見つけて入る。膝を強打したので湿布が欲しい旨伝えると、ならこれだな、と出してきたのはゲル状の保冷剤の入った袋。これがサポーターとセットになっている。貼るものは無いの?と聞くと、そういうものは知らない、と。困った、これから何時間も運転しなくちゃいけないし、宿に冷蔵庫は無いかも、と言うと、「いいものをやるよ」と、キンキンに冷えた保冷剤をくれた。親切。 これを膝に巻き付けて、なんとかSani Pass Lodgeに着く。
受付が「明日、岩絵サイトまでのトレッキングツアー予約済みですね」と。それが…膝が…。明日の朝の状態次第で決めていい?と言うと後ろにいたガイドが「無理だな」と「岩場がある道を12キロ歩くんだぜ、諦めなさい」。あぁ...ですよね…。 いい感じのコテージなんだが、ただただ横になるしかなかった残念さ。明日一日何をしよう。前の宿のスタローンのチャンネルが恋しい。
 
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