アルジェリア、タッシリ・ナジェール岩絵撮影行・その9

夜明け前に星空の撮影をした。着いたときはとても細い月だったが、今はちょうど半月くらいで夜遅くまで月が出ているため、月が沈んだ後でないと小さな星は見えない。



Oued In Djeraneへ戻る途中、いくつかのサイトを見る。有名なアーチ状の岩も見た。ここは観光ルートになっているので複数の観光客とすれ違う。タッシリ観光が盛んだった90年代にはもっとたくさん人がいたんだろうね、と言うと、ヨナスが「だから僕はここに来なかったんだ」と。アーチ状の岩のすぐ近くに激しく風化した岩があり、根元にダチョウの群れが描かれていた。





Oued In Djeraneの入り口前で、シェルターの床面の平板な岩の表面に様々な動物の足型がリアルサイズで彫られたサイトに寄る。ライオン、ガゼル、牛、サル、そしてサンダルをはいた人の足型もある。さながら足型図鑑といったところだ。ヨナスにどれが何の足型か解説してもらう。こうしたものはサハラではここだけだということだ。ハンターにとって足型は重要だが、これは何のためのものだろうか。若い男の子に教えるための教材のようなものだろうか。だが、それならば実際に狩りに同行させることで実物を見せながら説明した方が有効だろう。この岩に刻まれた足型はひとつずつで、歩幅も何もわからない。








足型の岩の横にはライオンを刻んだ岩もある。とても面白いサイトだった。



細長い人が描かれたシェルターがあったが、しゃがんだ大人(母親?)と子どもと見られる絵があった。





次第に砂丘エリアを離れ、砂というよりも泥っぽいエリアに入る。

魚を彫った岩があった。魚だけ複数彫られている。石彫に魚が登場するのはとても珍しいという。ナマズだろうか、顔の描かれたかわいいものも。




さらに大きな牛の彫り物がある岩を見る。線刻ではなく、内側を丁寧に彫り込み、体の模様も浮き彫りのような形で表現されている。右向きの牛が三頭。左向きの牛が一頭で、この左向きの牛は制作途中で止めてしまった印象がある。





大きなキリンと人物が彫られた岩壁があった。これはアンドラスによれば、新しいものである可能性があると。なぜなら、このエリアを調査した古い記録に記載がなく、これだけ目立つものを見落とすとは考えられないと。トゥアレグの文字が彫られているが、同時期に彫られたものかもしれないと。完全に新しく彫られたものでなければ、古く不鮮明なものを削り直した可能性もあるというのが彼の見立てだ。



ゾウの群れの線刻画が彫られた岩、キリンが彫られた岩も見る。どうも今回はゾウの線刻画サイトで光線の加減に恵まれていない。



二色に色分けされた牛の群れを描いたものを見る。昨日見たものと同じ様式だ。模様が交じり合ってどこか錯視効果をねらったような感じにも見える。この牛の描き方を見て、どこかアフリカ南部で見られるサン族(ブッシュマン)の絵に似ているなと思っていたが、サン族の岩絵との共通性については専門家でも指摘する人はいるようだ。


下の絵の白い丸は小屋、家を示している。牛の描き方も人の描き方もさまざまだ。






大きな岩に二酸化マンガンの見事なデンドライトが入っている所があった。立体感のある、立派な樹状結晶だ。
化石もたくさんある。一件ウミユリかなと見えるが、アンドラスによれば、ワームの一種だと。




例の三つ葉のような形の頭の人物像が色も鮮やかに残っている絵があった。これを見ても三つ葉型が何なのかよくわからない。帽子だろうか。



この日の最後は座るキリンの絵。子どもを産んでいるところだと言われる。漫画のような顔だ。イヘーレン様式だろうか。