「ジャニス」の歌詞について再び

ヴィデオ版の「ジャニス」(劇場版と同じなのだと思うけれど)のKosmic Bluesはこんな訳詩だった。

時は流れ続ける
友は去っていく
私は生き続ける
何故かも分からず
孤独な一日を
なんとかやり過ごす

やっとその時が来た
時は流れ続ける
25になったけどどうにもならない
子供の頃と変わりゃしない
でも構いやしない
これからでも遅くない
みんな心に火が燃えている
それをつかもう
死ぬまで燃やし抜こう

というものだった。
'Dawn has come at last'は「やっとその時が来た」としてある。この部分の歌い方はあんまりこの訳語にそぐわない感じだし、レコードの歌詞ではこの後に「25 years honey just in one night」なので、「ついに時が来た」という積極的な響きが無かったんだけど、この歌は「でも構いやしない」以降トーンが大きく変わるので、この後の言葉に沿う形で解釈したのかもしれない。
いずれにしても、私の25年間のあれこれを思い巡らしてるうちに夜が明けてしまった、というのはちょっと思い込みの強い解釈だったかもしれない。この後には「歳を重ねたからって、わかるもんじゃないし、愛が深まるわけでもない」と続く。Don't trust over などとも言われていたこの時代を考えれば、今25で、子どもの頃とあんまり変わらないからって、何も手にしていないからといって、そんなことは大したことじゃない。気にすることない。いつでもトライできるってわかってるんだから。と、この一連の下りは、歌の意図からすれば、大事なことは私たちこそがわかってるんだから、という感じで、もっと肯定的にみるべきなんだろうとも思う。
映画がつくられたのは彼女がオーバードーズで亡くなり、ロック・ミュージックにダブらされていた様々なヴィジョンが力を無くしてから随分と時間が経った後だ。映画は全編、彼女個人、それもどこか彼女の寂しさが際立つようなつくりになっていて、こちらも、どうしても観ていてそうした方向に引き寄せられていく感じがある。