金井田英津子さんの原画展

先週はあれこれあって書けなかったが、3日、筑摩文庫「文豪怪談傑作選」の装画原画展のトークショーに参加させていただいた。
このシリーズは、今年で3年目になるが、かねてからファンであった版画家の金井田英津子さんに装画を御願いしている。
既に10冊出ているが、きりのいい数になったところで、金井田さん、編者の東雅夫さん、作家の加門七海さんのトークショーが開かれたのだが、客席で拝聴するつもりが、飛び入りすることに。
お三方のお話を楽しく拝聴した。

原画は仕事の課程で既に目にしてきたものだが、既刊の10冊分、額装されて並ぶと実に壮観だ。
このシリーズの原画はスクラッチボードに似た手法で描かれていて、印刷時に着色している。
私は元々、木口木版画、また、原理的には同じスクラッチボードの技法が好きで、装画に木口木版画家の方に版画をつくっていただいたこともある。
クラッチボードは60-70年代には結構流行っていたと思うのだが、最近はあまり見かけない。20年ほど前に、画材屋で買おうとしたら、もう国産のものがなく、輸入品は質が悪いのだと言われた憶えがある。
単に線画をネガ反転させたものとは異なる、筆刻の妙があって面白いと思うのだが。
また、漆黒に光を刻みこんでいくことで出来上がっていく世界は、このシリーズにはぴったりなのだ。
金井田さんは白いアクリル板にアクリル絵の具のスミで形を作って、その上を細かく刻んでいくので、ドローイングとエッチングの両方があいまっていて、泥っぽいスクラッチボードの材質では得られない繊細さも出せる、と、自在なのだ。

飛び入りになったトークショーでは、正に末席を何とやらで、申し訳なかったのだが...。