フランス・巨石遺跡&洞窟壁画紀行 7日目

朝早く発って南西のVallon-Pont-d'Arc近くにあるショーヴェ洞窟のレプリカ、ショーヴェ2に。

ショーヴェ洞窟の壁画は1994年、洞窟学者のショーヴェら3人が発見した。犬が穴に落ち込むことで偶然みつけたラスコーなどと違って、石灰岩の山の上で洞窟探査をしていて、下から風が出ている場所をみつけ、内部に降りていく形で壁画を見つけたのだという。ちょうどこの岩山の中に洞窟がある。

 

 

洞窟のなかにはライオンやサイ、馬、牛、マンモスなど、14種の動物を卓越した描写力で描いた壁画があり、発見は世界を驚かせた。絵の多くは黒を基調にしたものだが、独特なぼかしで濃淡をつけていてる。ライオンのグループ、数頭の馬など、動物の上半身だけが重ねて描かれているものも多いが、配置・構図の妙によって、動きが生き生きと表現されている。しかも年代測定の結果、大部分が32000年前前まで遡る、オーリニャック文化の時期に属することがわかったのだ。その後、初期のものは36000年前まで遡るとする分析結果が出ていて、ショーヴェ2の入り口にもこの年代が記載されていた。

見学者を大勢入れたことで劣化が進んだラスコーの轍を踏まないようにと、ショーヴェは最初から一般公開されることはなかった。代わりにリアルに洞窟内を再現したショーヴェ2が作られて、2015年に公開された。

 

 

ショーヴェ2は元の洞窟を3Dスキャンしたデータを元に再現されていて、コースは250m強、見学は小グループごとに、音声ガイドのヘッドホンを付けて約1時間回る。
中に一歩入ると、とてもレプリカとは思えない、本当に洞窟に入っていると感じられる臨場感がある。壁面に細かくついた方解石の結晶、床を覆う細かい砂粒など、全てがリアルで、複製画も本当に良くできている。照明も最小限に抑えられていて、しかも絵が描かれた時代に使われていただろうランプの光を模した、ゆれる光で見るとどうなるかなどの演出もある。ちょっと残念だったのはフランス語のガイドと音声ガイドの説明の順番が微妙にズレていて、フランス語のガイドが光を当てながら説明しているとき、音声ガイドは同じ場所の別の絵の説明などしていて、そこにはきちんと光があたらなかったりしたことだが、他は期待以上の体験だった。他の皆もとても良かったと。

内部は撮影禁止なので、以下の写真はオフィシャルサイトからの引用。一番上のサイの角のダブり具合など、まるで未来派のような表現だ。こんな、とんでもなく斬新で上手な絵を描く人が突然現れて、しかもこの洞窟だけにしか絵を描いていないというのが本当に不思議だ。

 

 

ショーヴェ2併設のギャラリーには当時このエリアに棲んでいて絵のモチーフになったマンモス、サイ、バイソン、メガロケロスなどの動物の精巧なレプリカが置いてある。みな毛がふさふさで大きい。これらを見ると、大きな動物に対する怖れと畏敬の念というものが納得できる。

 

 

ショーヴェ洞窟(本物の)はアルデーシュ川に面した岩山の中にあるが、すぐ近くにポン・ダルク(アーチ状の橋)と呼ばれる自然の岩の橋がある。この岩は壁画の時代からあったのではないかと考えられているようだ。アーチの穴はもう少し小さかったかもしれないが。

 

 

さらに南下してアヴィニョンの町の西、ガルドン川にかかるローマ時代の巨大な水道橋ポン・デュ・ガールに寄る。現存するローマの水道橋の中で最も高さのあるものだという。保存状態もいい。それにしても、ローマの土木工事力よ。

橋とその周りの石組みは修復が繰り返されたのだと思うが、18世紀の石工たちによる刻印が多く残っていた。名前、年号といっしょにハンマーなどの絵が彫られているのが面白い。

 

 

この日はさらに西に移動してカルカソンヌに泊まる。宿泊は全てアンドラスが予約してくれたibisというチェーン展開の格安ホテルだが、部屋も広めで悪くない。