アルジェリア、タッシリ・ナジェール岩絵撮影行・その11(最終日)

現地滞在10日以上という、私にとって最近では長めの旅行もこの日で最後。海外に自分でテントを持っていくのも、1週間以上キャンプするのも初めてで、新鮮な経験だったが、あっという間だった。
昨夜は久しぶりにシャワーも浴びて、すっきりして寝た。砂漠は乾燥していて、しかも気温も低かったので汗をほとんどかかず、さほど不快ではなかったが、やはり髪の毛など、全体がごわごわしてくるので、レナータも「うわーって、かきむしりたくなるわね」と言っていたがまさに。
私にとってこの日は最終日だが、ドイツの女性2人はあと5日ある。男性陣はその後12日間のトレッキングに出る。トレッキングは車で行ける所まで行き、一日歩いて車まで戻るということの繰り返しのようだ。要するに車で行けない場所に徒歩で行き、岩絵のサイトを見て歩くもので、これを12日間続けるのは結構な体力が必要だろう。ロバートはおそらく70歳ほどなので、かなり体力に自信があるのだろう。今の私にはちょっとしんどいかもしれないが、試してみたくはある。

今日はジャーネットの北に向かう。
厚い砂岩の層が連なるエリアはこの近辺で最古の地層だという。カンブリア紀後期だという。Tadrartの岩とちょっと印象が違って重厚。



先ず、Aït Talawatenというサイトに行く。岩場の中にシェルターというよりも大きな岩の隙間のような空間があり、素晴らしい絵があった。Round Headと呼ばれるタッシリでは最も古い部類の絵とされる、名前の通り頭の丸い人物のシルエットと動物の絵だ。シンプルだがフォルムが実に洗練されている。
丸まげをゆっているような形の人物もいる。頭に長い房飾りのようなものを付けている人もいる。そして、牛の絵がない。牛がこのエリアに持ち込まれる前なのだ。オリックスやガゼル、バーバリーシープのように見える動物ばかりだ。キリン、ゾウ、ライオンなども見当たらない。







頭に角のついた人物像も多く見られる。仮面を付けた祭りなどの場面だろうか、それともシャーマンだろうか。もしかすると動物霊に憑依された状態を示してるのか。角のついた人物はどれも子どものような体形にも見える。





撮影時にはわからなかったが、獣の頭をした人物像も。ヘルメット型仮面だろうか。どこかコートジボワールに住んでいるセヌフォ族の仮面に似ている。見どころのとても多いサイトだった。



この後、ゲルタ(水場)に寄る。ゲルタの周囲にはジャスミンのような良い香りの白い花がたくさん咲いていて、ハチ、チョウ、そして赤いトンボがいた。サハラでトンボを見るとは思わなかった。生き物を見るとちょっとほっとする(ハエは別!)。




私にとって最後のガサガサの昼食をとるが、アブドゥラがみんなに野菜のたっぷりはいったピラフをふるまってくれた。圧力鍋で作ったものだ。ずっと旨そうなものを食べてるなと思いつつ見ていたが、かなり薄味だった。コーラや砂糖のたっぷり入ったお茶を飲むので、料理も濃い味付けかと思いきや、ちょっと意外だった。
再び道路に戻ってジャネットの空港に近いサイトへ。ゴミが大量に捨てられている場所を通る。
この旅で、結局野生動物はほとんど見られなかったが、岩の隙間を走るハイラックスの親子を見た。これでも象の親戚なのだ。



旅の最後に見たのは岩山に彫られたあまりにも見事な牛の彫り物だった。Terarartの「泣く牛」と呼ばれているものだが、これまでに見た岩の彫り物とは洗練の度合いもテクニックもレベルが違う。牛の目の下にある窪みが涙のように見えるというので、この名がついている。これはいつごろのものなのだろう。上手い。あまりに上手すぎる。右端の牛の体には模様が彫り込まれているが、この模様がとてもナチュラルというか、岩肌に馴染む感じで無理なく彫られているという印象だ。他の牛にここまで深い模様が刻まれていないことを考えると、もしかすると、これは元々岩肌についていた窪みで、これが彫る者に「牛の姿」を見せたのかもしれない、と考えてみた。







これで今回の旅は終わり。ジャネットの宿泊所に戻り、フランス人の団体と一緒に夕食をとって、部屋で仮眠し、空港に深夜に向かう。
怪我した足もだんだんと良くなっていたレナータとお別れすると、「クゥローシしないように気をつけてね」と。過労死のことなのだった。エレーナは毎年エジプト南部の砂漠に深く入っていくツアーを主催しているので、こんど計画するときは教えてと言うと、「来る気あるの? いいわよ。」と言ったあと、「食事はこのツアーよりずっと美味しいから」と小声で。レナータも笑っていた。

ジャーネットの空港を出るときもカードに「旅の目的」やら「滞在先」やら書き込まねばならなかった。ここまで手続きが多い国は初めてだ。
私と入れ替わりでアンドラスの奥さんがジャーネットに着いたのだが、挨拶はできずに入れ違いで飛行機に。
アルジェの空港で半日時間をつぶして帰路についた。
次回は是非、タッシリ・ナジェールの中心、台地に行ってみたいと思う。