タッシリ・ナジェールの旅 7日目

朝7時に出発し、Tin Tazarift内のサイトを見る。昨日の最後に訪れた場所にカバの絵があるというので撮影しようとしたら、アンドラスが明日戻ってくるから先へ急げというので撮らず。が、その後わかったのだが、ここにカバの絵があることに気づかずに言っていたことで、結局戻ることはなかった。残念。

 最初に訪れたシェルターには四角く色が変わっている部分があったが、それはユネスコが壁画の保存の試験として表面に何かコーティングしたものだった。塗ったときはこんなに濃度の差はなかったのかもしれないが、明らかに失敗といえるだろう。その右上にはとても人間とは思えない、頭が房のようになった人物像が。他の動物の絵などにもこうしたフニャフニャしたフォルムがあり、溶けているような象の絵とかもあるのだが、もしかしたら単に下手な人が描いたのかもしれないという気もしてきた。

Tin Tazarift

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Tin Abotekaの等身大の弓を持つ男性と同じタイプの絵があり、これも本当に絵が上手い人が描いたんだなと感心する。子どもの立ち方なども絶妙で、何か台詞が聞こえてきそうな感じだ。

このエリアには手のステンシルも多く残っている。明らかに子どものものも。

Tin Tazarift

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 体が横に細長く伸びた、足の無い女性像が。足が無いとどうしても幽霊?霊魂?と思ってしまう。別のサイトにやはり細長く手足が伸びて漂う人物像があるのだが、それは死を表現していると言われているので、こちらもそう解釈できるかもしれない。アンリ・ロート隊の複写画には「横たわる女性」というタイトルが。

ヤギのような頭の獣人像がある。何か話しかけているかのような、ユーモラスな姿だ。近くにやはり頭に角がついた人物と数人の人の絵があり、こちらは角のある人物が両手を上げて威嚇するような姿勢にも見える。いわゆるジンかもしれない。

Tin Tazarift

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大きな弓形の形の上に二人の射手が描かれている有名な絵がある。これは以前は舟に乗っている図とされていたようだが、弓形の両端には動物の頭のようなものがついていて、今は大蛇に弓を射る人、という解釈が一般的なようだ。同じモチーフは他の場所にも見られるようで、ロート隊の模写など見ると、よりはっきりと動物の頭がついているものがある。

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ものすごい大きな頭の「ポンパドール」像もある。これを見るとやはり髪の毛をいじって作れる大きさではない。何か大きな帽子のようなものだったのだろう。

Tin Tazarift

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ウサギの耳のようなものがついた人物像がここにもある。耳の先に色もついている。ただ、タッシリにはウサギの絵もあるのだが、こんなに耳は長く描かれないので、ウサギの耳を模したものではないのかもしれない。ポルトガル人のジョアンナが「こんなのが出てくる映画を観たことある」というので、「ドニー・ダーコでしょ」と。

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 Round Headと呼ばれる最も古い時代のものとされている絵も少しずつ増えてきた。この片手もしくは両手を軽く広げて膝を少し曲げるスタイルは一種の定型になっている。面白いのは腰に布のようなものを巻いているのだが、後ろに垂れていて、前は丸出しのように見えることだ。この丸い形もあちこちに出てくるのだが、何だかわからない。「このカプセルに乗って来ました」と言ってるみたいに見える、とカナダ人のミシェルが。彼は私と同い年。小学生の頃、やはりテレビでデニケンの番組をさかんにやっていたようで、タッシリといえば「火星人」と、刷り込まれているのだ。大いに共感。スケジュールがタイトになってきたけど、「火星人」でちゃんと時間とってくれるだろうな、「火星人」をオミットすることだけは許されない、と。

Tin Tazarift

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ヒヒの描かれたパネルもある。また、耳のような突起がふたつついた魚のような不思議な絵もある。これもまたあちこちに出てくるモチーフだが何なのかよくわからない。

Tin Tazarift

Tin Tazarift

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タッシリには双頭の動物像がいくつかあるが、ここにも首の長い、双頭のキリンのような絵があった。これは補正した写真だが、現地で見たときは「双頭の牛」と説明されたように思う。てっきり頭が消えているのかとおもいきや、下を向いたキリン(?)なのだった。

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さらに東へ、最も壁画の集中するサイト、Sefarに向かう。途中、Tin Teferiestという小さなサイトにも寄る。Round Head時代の人物像で、弁髪のようなスタイルのものがある。髪の毛なのか、何かつけているのかわからないが。この時代の丸い頭の人物像は頭に模様が描かれているのが特徴だ。刺青かなにかなのか、あるいはかぶるタイプの仮面かもしれない。

 ミッキーマウスのような耳のついた人物画もこの時代のモチーフのひとつだ。この人たちも後ろに垂れた腰巻きをつけていることが多い。

Tin Teferiest

Tin Teferiest

Tin Teferiest

Tin Teferiest

Tin Teferiest

セファールに入り、いろんな時代、いろんな様式の絵が渾然一体となった大きな壁面を見る。左下のものは何なのか。これまたデニケンが喜びそうな絵だ。バーバーリー・シープの下に二羽のダチョウがかかれていることには現地で気付かず、写真を見返してはじめてわかった。こういうゴチャゴチャした壁面は、時間をかけて見るといろんなものが見えてくるのだが、いかんせん時間があまりないせわしないスケジュールだった。

Sefar

Sefar

 二晩セファールに連泊することに。連泊は嬉しい。