チベットのアイ・アゲート

最近、ebayなどに、チベット産のアイ・アゲートの原石なるものが多く出回っている。ほとんどが中国の石屋だが、二次的に販売しているアメリカの店などもある。
実物は見たことがないが、これはどう考えてもおかしい。おそらく、普通の瑪瑙のラフに穴を空けて、同心円状の模様が出るように研磨した別の瑪瑙の玉を埋め込んでいるのだ。
無断転載だが、まがい物商売でもあるし、写真を掲載してしまおう。

アイ・アゲートと呼ばれるものは、瑪瑙の塊の中に飴の「かわり玉」のような構造の縞が入った玉があり、これが表面に出てきて目玉模様になるものと、水晶のクラスターが鍾乳石状に細長い形に伸びたものの芯が年輪状の同心円の瑪瑙になっているものとある。これ以外に、水平な層状に重なった縞模様の瑪瑙を、球面状に削って同心円状の模様が出るようにしたものがあるが、これは削り方の問題であって縞模様そのものは同心円状にはなっていない。
件のチベットのアイ・アゲートはこのように球面状に削って同心円状の模様を出したものを、なんの変哲もない玉随の塊に埋め込んだものだとしか思えない。目玉模様が球面状の研磨で出来ているので、目玉模様の周縁部と、周囲の瑪瑙の地の色は、つながっていて、同じでなくてはならないのだが、ここで紹介する写真の瑪瑙など、磨かれていない肌の中から飛び出るような形で、目玉部分だけが磨かれているのだ。本当にこういう形の瑪瑙があり、こういう研磨が可能だとしたら、目玉模様になっているところが、丸いコブのように飛び出した原石があり、そのコブを丸く丁寧に磨いたところこういう姿になった、というとんでもない偶然が重ならないかぎり無理な話なのだ。

そもそも、「チベットのアイ・アゲート」「天珠・天眼石」なるものが大量に流通しているが、まず、ほとんどが人工的なものか、ブラジルかウルグアイ産の縞瑪瑙を同心円状の模様になるようにカットしたものだと思う。
チベットで実際に瑪瑙が採れるのかもしれないが、これまで原石や標本を見たことがないし、情報もないのだ。数珠玉だけが大量に流通しているというのはどう考えてもおかしい。