寝台特急「北陸」

廃止になった寝台特急「北陸」に、乗ったことがあったということを、あらためて思い出した。
忘れていたわけではないが、自分が子どもの頃乗った寝台列車が「北陸」だったことを再確認したのだ。まだ走っていたとは。

37年前、小学5年生から6年生になる間の春休み、仲良しだった友達の父親の郷里だった高岡に、同級生3人で訪れたときのことだ。
子どもだけで泊まりがけの旅行をするのは初めてだった。えもいわれぬ開放感と緊張だった。
おそらく発車するまで親が上野駅に見送りに来たのだと思うが、憶えていない。だが、狭い二等寝台のベッドに横になって、ベルトをかけたけれどなかなか寝つけなかったこと、明け方目が覚めて、窓から朝焼けを見たことを今でも鮮明に憶えている。あれほどわくわくした列車の旅はその後ない。

鉄道ファンにはならなかったが、列車の旅にはずっと憧れをもっている。
ただ、窓の開かない、音も静かな特急に乗っていても、あまり感慨はない。むしろ圧迫感があって好きになれない。
風に当たり、車輪がレールの継ぎ目を越える音を聞き、窓の外を流れていく景色をぼんやり見ながら、ゆっくりと、どこか見知らぬ場所に連れて行かれるような感覚が、列車の旅の魅力なのだ。