富士山周辺

富士山を見ながら温泉に入りたくなり、河口湖へ。
週末は晴れるはずだったのが、悪天候がずれ込んで、裾野も見えず。娘は雪があるので大喜びだったが、ともかく寒い。木々の枝が全て氷でコーティングされている。これは綺麗だった。葉っぱも新芽も全て凍りづけだ。氷柱が上や斜めに伸びているものもある。ガラス細工のようにみえる。



ガラス細工といえば、河口湖町のガラス工房「自在」はとんぼ玉の体験制作をさせてくれる。とても素敵な工房だ。とんぼ玉の体験制作をするのはこの工房で三つ目なのだが、どうも私は上達せず。でも、とても面白い。



結局、日曜の夜明け時のほんの1時間ほどだけ富士が見え、なんとか「富士見風呂」がかなう。

少し富士山を見ながら歩くつもりだったが、足元が雪か氷なので、鉱物の博物館に二つ寄る。
ひとつは河口湖畔の「山梨宝石博物館」で、以前甲府にあったものだ。本来なら水晶の加工産業が盛んだった甲府にふさわしい博物館なのだろうが、おそらく訪れる人も少なかったのだろう。観光地に越して来たわけだ。建物も立派だった。
さまざまな宝石が原石、加工品といっしょにケースに入って、ずらりと展示してある。おそらく宝石にかぎれば日本最大規模の展示なのだろう。巨大な水晶の結晶もある。が、鉱物標本は小さなケースに産地も種類もゴチャゴチャに入れてあって、とても博物館といえるような展示のしかたではなかった。表記もちょっとアバウトで「めのう」とか「メノー」とか、サンダーエッグが「サンダース・エッグ」とか。日本語なんだから「メノー」はないだろと思う。甲州の鉱物標本もそれほどなかった。

もうひとつは富士宮市にある奇石博物館だ。これは個人が始めた博物館と聞いていたので、こぢんまりしたものかと思っていたのだが、さにあらず。大変立派かつとても良くできた博物館だった。
70年代はじめに個人が始めたものではあるようだが、益富寿之助の協力などを得て作られたもので、敷地も広く(ヘリポートまである!)、展示も鉱物、化石、岩石と幅広い。宮沢賢治と鉱物のコーナーもあれば、ブラックライトで発光する石を集めたコーナーもある。最もユニークなのは博物館の名にもなっている「奇石」で、『雲根志』に掲載されている珍しくもユニークな国内の石がずらりと並んでいるのはなかなか壮観だ。益富博士のノートなどゆかりの品なども展示されているし、『雲根志』の原本もある。
メノウ好きとしては、巨大なポリヘドロイドが見物だった。撮影もOKというのがまた嬉しい。唯一宮沢賢治のコーナーだけは著作権があるので撮影禁止だという。見てみれば、本当のゆかりの品はほとんどない。
それにしても、宮沢賢治の肖像写真や手帳の写真使用料の高額なこと。本人はまさか自分の顔が商売になるなんて思いもしなかっただろうに。知ったら大いに嘆くにちがいない。




河口湖はこの時期、毎週末花火大会がある。これがなかなか本格的なもので、打ち上げ用の大玉を湖面で破裂させると、まるで大きな蓮の花が咲いたような感じだ。


富士山はほとんど見られなかったが、樹氷ととんぼ玉と奇石博物館と花火を大いに楽しんだ。

『石の卵』その後2

『石の卵』に写真を提供してもらったオーストリアのメノウ・コレクター、ヨハン・ゼンツが、『石の卵』をドイツの雑誌『Mineralien Welt』で紹介してくれたらしい。頁をpdfで送ってくれたのだが、ドイツ語でもあるし、名前も見当たらないので、どこに書いてあるのかさっぱりわからず...。「もう一冊送ってんか。代金払いまっせ」と、彼は言うのだが、まだ『Agate II』が届いていない。約束なんだから送ってよ、と返事する。こうなったら意地でも自分では買わないぞ。

約10年前に買って切れずにそのままになっていたボツワナ・アゲートの大きなラフをいくつか切ったが、とてもいいメノウだった。最近自分で採った日本のメノウばかり切っていたので、ちょっとしたショックだった。やっぱり違うなぁーと。
ウェブサイトLithos Graphicsのボツワナ・アゲートの頁を更新した。

以前も書いたが、ボツワナではメノウ採取の元締めがいて、200人ほどの女性が随分安い賃金で石拾いをしているという。『石の卵』に写真を提供してもらったスコットランドのコレクターDavid Adnersonの話だ。メノウ採取も鉱業のはしくれのようなもので、鉱山労働にはいつでもそうした問題がつきまとう。
David Andersonはこの夏、Nick Crawfordとの共著でスコットランドのメノウの本を出すらしい。かなり本格的なものになるようで、楽しみだ。驚いたことにもうAmazonで予約を受け付けている。
Macphersonの「Agates」も、薄いがスコットランドのメノウだけで構成したとてもいい本だ。

Scottish Agates

Scottish Agates

Agates (Earth)

Agates (Earth)

アバター、三浦海岸

何故か茅ヶ崎で映画『アバター』を家族で観る。
3Dの眼鏡をかけて見始め、15分くらいで、これは最後まで耐えられないんじゃないかと思うほど、目の奥の筋肉がムズムズするような違和感を覚えた。遠近感を強く出すために、手前にあるものが極端にピントがずらしてあり、これに自然と目が焦点を合わせにいこうとするせいか、度の合わない眼鏡をかけているような疲労感があった。慣れたのは最後の30分くらいだろうか。面白い体験だったが。
絵は驚くほど緻密に出来ているけれど、色彩とか輝度の高さがどうも不自然とうか、ラッセン系のイラストみたいで、アニメーションを観ている感覚だった。そういえば、同じくキャメロンの『アビス』の最後に出てくる宇宙船も遊園地の乗り物のような色だった。
ストーリーは....『ポカホンタス』と『エイリアン2』をくっつけたような感じ。
面白い視覚体験で充分楽しめたが、やっぱり値段が高すぎる。ティム・バートンの『アリス』も3Dらしいから同じ金額なんだろうか。


今年始めて三浦半島に行き、海岸で貝を拾った。天気も良く、水平線の向こうに富士山もくっきりと見える。

黒崎、長浜と行くが、タカラガイがとても少なかった。黒崎など、昨年はシボリダカラ、ナツメモドキなど、本当にたくさんあったが、全く見つからない。岩にアオサがたくさんついていて、浜の雰囲気も昨年と違って見える。
それでも、大きめのホシキヌタ、コモンダカラ、ハナマルユキなど、数種のタカラガイを拾う。貝が少ないので、カニの甲羅やウニの殻、それと崎陽軒の醤油入れが打ち上げられていたので、なんとなく拾う。昭和のものだ。調べてみたら、30年代から昭和63年まで横山隆一の絵で48種の醤油入れのキャラクター「ひょうちゃん」が作られていたらしい。ということは、少なくとも20年以上前のものということになる。もっとも、このへんでは鎌倉時代の陶片なども打ち上げられることがあるので、漂着物としてはそれほど古いものではないんだが。



葉山の御用邸前の海岸でも貝が上がると聞いていたので、初めて歩いてみたが、ほとんど貝はなかった。小石が多く、模様はないが、透明なメノウ(玉随)が結構落ちている。三浦のメノウというのは、それなりに知られているらしい。ジャスパーもある。

葉山の海岸の岩は波に浸食されてまるで巨大な古生物の背骨のような姿だ。

「たくさんのふしぎ」『石の卵』その後

『石の卵』が出てから、様々な感想をいただいた。
オレゴンに旅行に行ったときに見たことがあります」とか、「子どもの時分、祖母が旅先で買ってきたサンダーエッグを見た記憶があります」というような話も何人かの方からお聞きした。
20数年来の付き合いのある人で、私にカイヨワの『石が書く』を貸してくれた人も、随分昔オレゴンに旅行に行ったときに買ったという、切っていないサンダーエッグを持っていて、是非切ってみて欲しい、と、預かった。
2つあり、ひとつは完全な状態で、もうひとつは三分の一ほど欠けて中が見えている。早速切ってみたが、完全な状態の方は、なかなか面白い模様のメノウとオパールが入っていた。母岩を見た感じでは、リチャードソン・ランチのサンダーエッグのようにみえる。
長年持っていた石を切ってほしいと頼まれると、何にも出て来なかったらがっかりさせてしまうかな、とか、割れてしまったらどうしよう、と心配になる。一度切ってしまったらとり返しがつかない。喜んでもらえてひと安心だった。

メノウの本・雑誌

ドイツのメノウ・ディーラー、ピーター・ジャッケルが発行しているメノウの本を購入。タイトルはAchate aus Marokkoと、モロッコのメノウとあるのだが、届いてみたら、半分はドイツのメノウの紹介だった。美しい標本の写真、産地の写真満載のなかなかいい本だ。
ロッコのアトラス山地にはメノウの産地がたくさんあり、新しいものも次々と見つかっている。

また、アメリカの雑誌Rock & Gemの2009年11月号がメノウの特集満載だったので、取り寄せる。



メインの特集は「メノウの中のこれは何?」というもので、メノウの種類の基本知識に関するものだ。
面白かったのは、有名なアメリカのメノウ専門店The Gem Shopのオーナー、Gene Muellerのメノウ探索の半生記で、ラグーナ、アグア・ヌエヴァ、アパッチなどのメキシコのメノウの採掘を巡る話が載っている。彼がいなければ、チワワ州の美しいメノウが市場に出ることはなかっただろう、という話。
彼は祖父の友人が石屋で、8歳のときにレイク・シューペリア・アゲートを拾ったのがメノウ収集のきっかけだったらしい。重機を持ち込んだ採掘の苦労話など、結構面白かった。メノウのハンターも「山師」であることに変わりない。地主に金を払い、重機を調達して、砂漠に道を造って採掘してもいいものが出て来なかったら大損、ラグーナのような美しいメノウが採れる場所を探し当てたら、一攫千金とまではいかないけれど、今のようにメノウの値段が高くなるとそれなりに潤うはずだ。彼の店のメノウも10年前に比べると値段が3倍くらいになっている。
ケンタッキー・アゲートの紹介の特集も面白かった。ケンタッキー・アゲートは5年前くらいまでほとんど市場に出ることはなかった。地元の大学の地学者もよく知らなかったというから驚く。川で採取するのがメインらしいが、いくつかポイントがあり、驚くことにアメリカは川も私有地になるらしい。地主の許可がないと川に入れないのだが、最近高値で取引されているため、金目当てで無許可で取りに入る者が増えているという。
ケンタッキー・アゲートが有名になったのは、地元の判事をしていた人がサイド・ビジネスとして売りに出したものが、ヨーロッパのショーに持ち込まれたのがきっかけだ。ほんの5年前くらいの話だが、これで値段が跳ね上がってしまった。彼は判事の選挙かなにかに勝つために金が必要だったようだが、メノウを売りに売って、結局負けてしまった。

ジャッケルからメノウも購入する。アルメニアのメノウだが、いろんなインクルージョンが入っていて面白い。

切断機修理

今年アメリカから買った切断機の万力部分が壊れてしまった。固定されていたネジが最初から歪んでいたため、だんだんとシャフトが曲がっていって、締められなくなってしまったのだ。
交換部品を送ってもらう。早速取り付けようとしたところ、二つある固定ネジのうち、ひとつは最初からネジ穴が空いておらず、ネジでとまっている「ような感じ」だったことが判明。
いい加減だなぁ。
自宅からドリルを持ってきて、鉄の万力に穴を開けるという面倒なことになってしまった。

久しぶりにいくつか切ってみた。
福島県北部の桑折町で採取したもので一番大きなものがこれ。左右が約20センチほどある。上下の黒っぽい部分は樹状のインクルージョンなのだが、あまり大きいものがない。

青森の梵珠山の水色の縞瑪瑙

コンクリーション

たくさんのふしぎ』「石の卵」に写真を提供してくれたJeffrey Andersonから丁寧な礼状をもらった。彼は瑪瑙のコレクターであり、かつ、「セーラームーン」の熱烈なファンなのだ。
彼の瑪瑙のサイトはアメリカの珍しい産地のサンダーエッグなど、画像が豊富で、販売もしている。
http://www.sailorenergy.net/Minerals/MineralMain.html

セーラームーン」はアメリカは「セーラーエナジー」という題で放映されていたらしい。

彼によれば、「石の卵」に掲載したニュージーランドの巨大なセプタリアがゴロゴロしているモレアキの海岸と同じような場所が、ミシガン湖岸にあるという。私もミシガンのセプタリアは原石の状態でいくつか持っているが、そんなに大きなものは見たことがない。割るとほのかに石油の匂いがするそうな。
セプタリアではないが、コンクリーションで、丸く固まった石がゴロゴロしている場所、その名もボウリング・ボール・ビーチというのがカリフォルニアにある。なかなかの奇景だ。

コンクリーションとは鉱物事典によれば、「堆積岩の特定の自生鉱物組成が団塊状または不規則に濃集したものを総合した名称」ということになるようだ。
能登の仏石などもこの部類に入るし、最近「パワーストーン」だと言って売られているモキ・ストーンも同様だ。

写真はいずれもWiki media commonsのもの。